ICTで築く明日の社会

人が備わって初めてICTが生きる 慶應義塾大学教授 片山善博氏

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――ソフト開発のベンチャー企業が地方に拠点を置くケースも増えています。

 企業誘致も人材確保の有力な手段ではあるだろう。ただ、人材を育てていく教育機関など、インフラを地道に整備していくことが大事だ。ソフト開発や商品企画、マーケティング、ブランディングといった機能を東京に頼らざるをえない状況では、いつまでたっても自立できない。

新たな地方モデル必要

 話は少しそれるが、2020年の東京五輪の公式エンブレムが白紙撤回となった。作成したデザイナーは名古屋市の東山動植物園や、群馬県太田市の公共施設のロゴもデザインしたそうだが、自治体はなぜ、その県内の人材を使わないのだろう。域内で人材を育てるという観点があってもいいんじゃないだろうか。

――人を活かす仕組みはどうやって作ればいいでしょうか。

 地方活性化というと自治体が取り仕切り、商工団体が協力する手法が一般的だが、その構造自体がもはや限界ではないか。自治体はコーディネーター役に回り、意欲のある民間企業や団体に計画から運営まで任せるなど、新たなビジネスモデルを生み出す時期にきている。

 あとは予算配分の問題。教育にもっとお金を回さなければ。商品券など目に見えるところにお金を使う一方で、公立大などは徐々に補助や助成を絞られてきている。国立大の文系学科見直しの話も、目の前のニーズばかりにとらわれた近視眼的な議論になっていないだろうか。これから必要なのは柔軟な発想力やクリエイティビティを持つ人材であり、こうした才能は理系のすぐ役に立つ教育だけから生まれるものではないだろう。

 地方経済が今のような状況に陥っているのは、いわば「生活習慣病」のようなもの。長い時間をかけてつくられた病であり、生活習慣から直していくしかない。そのためには人を育てていくことが、回り道のようで実は近道なのだ。

キーワード:経営、経営層、管理職、技術、イノベーション、ICT、IoT、AI、ものづくり、製造

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