ICTで築く明日の社会

人が備わって初めてICTが生きる 慶應義塾大学教授 片山善博氏

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――下請けから脱却するには、どんな政策が求められますか。

 例えばアパレル産業。地方には素材を生産、加工する企業はあるが、デザインやマーケティング、そしてブランディングといった、高い付加価値を生み出す機能が全くといっていいほど欠けている。

付加価値を高められる人材を

 こうした付加価値を生み出すのは人だ。高いレベルの技術やノウハウを持つ人材をいかに増やすかが、地方にとって大事になる。ところが、今の政策はヒトにお金をかけることに重点が置かれていないようにみえる。地方のニーズとは完全にずれている。

 お金の流出を防ぐという観点では、エネルギー自給率を高めることも有効だろう。風力や地熱といった地域の自然を活かした再生可能エネルギーを開発する。しかも、その運営会社は地元資本である必要がある。時間も人手もかかるが、地道にこうした取り組みを重ねていけば、着実に産業は育っていく。

 公共事業は即効性があるといわれるが、建設機械や資機材などはほとんど域外から調達する。建設作業員も工事が終われば仕事がなくなるため、魅力のある働き場所にはなりにくい。どうしても必要なインフラ整備は進めるべきだが、急いで作る必要のない、「景気対策」としての事業はもうやめるべきだ。

――ICTを活用した取り組みも各地で盛んになっています。

 ICTは地方再生への有力な基盤づくりになるとみている。地方は大消費地から遠く、アピールがしにくい。ネット環境はこうした距離のハンディ、情報発信のハンディを克服するためのツールになり、地方からでも安価に良質な情報発信が可能になる。

 私自身も鳥取県知事時代に光ファイバーの敷設に力を入れた。全国的にみても、ハードの基盤整備は、ほぼできつつある。問題はこうしたハードを使いこなすソフトの技術者が足りないことだ。やはり人の問題になる。

 例えば、地方では農業や漁業など一次産業が主力のところが多い。生産現場と市場をつなぐインフラとしてICTをどう活用するかが問われてくる。「いいものだから売れるはず」ではダメで、市場のニーズにあった商品を、タイムリーに、しかも利潤が得られる価格で売る。こうした役割を担う人が備わって、初めてICTが生きてくる。

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