「エンゲージメント」が経営を変える

デジタルが生む人と企業の新たな絆 ローランド・ベルガー プリンシパル 田村 憲史郎氏

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 この世界を作り出そうとしているAmazonはネット上の単なる本屋だった。本という「商品」やEC(電子商取引)という「チャネル」の視点からEchoの開発を手がけるという視点は生まれてこない。ユーザーとの対話を企業価値の根幹と規定し、どこでの対話が不足しているかという発想になって初めて生まれてくる。Amazonは実にEchoのプロトタイプ開発を2011年に終えている。5年前に既にこの世界を予見していたことになる。ここまで差は開いてきている。

真に信頼できる相手かどうか

 本質的視点の転換は、かつてのように企業とは「良い製品」や「良い店舗」を提供する役割という枠組みから脱却することだ。提供側のProduct outな発想から脱却し、受益者側との「対話」による価値提供を企業の本質的価値として捉えなおす。その対話の道具として「製品」や「店舗」を位置づける。

 この対話によるコミュニケーション密度は、当初我々が想像していたよりも遥かに豊かな情報を内包しており、受け取り側には企業の真の姿が垣間見えるようになる。

 「対話を拒む相手」「対話するが腹の底で何を考えているか分からない相手」「真に信頼できる相手」。その差は大きい。そしてこの3つ目の状態を作り出すことこそが「Engagement」という関係性にほかならない。

 ネットの世界では様々な情報が一瞬で駆け巡り、情報を得たものが得をし、得ない者が損をする構図がより明確になった。それは決して選ばれたもののみに提供される情報ではなく、情報を得たいと思い能動的に行動したものが獲得する「報酬」だ。能動的に動いて成功体験を積むほど、企業から発信される情報を吸収し、解釈・消化、自分の言葉に置き換え、それを外へ発信するようになる。つまりは自分の意思(自己解釈)の必要性を学習していく。

 企業が口当たりの良い表現をあまねく使うということも当然認識しているし、その言葉が単なる表面上の言葉でしかないということも認識している。人々はあらゆるコンタクトポイントからの情報を収集(もしくは情報収集の窓口が閉ざされているということを認識)、それを基に個人的見解を作り出す。

 その結果として評価されるのは「付き合う相手として本当に最良の相手なのか」という非常にシリアスなものだ。それは信頼感という関係性に行きつく。人と人との関係性でも一時的な激しい感情から、徐々により本質的に深化し、安定した信頼性という感情へ移行していく。ずっと連れ添い対話を重ねることでそれは訪れる。対話の回数こそがものを言う。同じことが企業と人にも言える。それだけの質のコミュニケーションが企業からも可能になり、かつての企業と個人を超えた関係性が育まれ出してきたということだ。

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