上杉鷹山 リーダーの要諦

赤字藩の立て直しに奏功した動機づけ理論 佃総合経営事務所 代表 佃 律志 氏

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 「寛三の改革」以降になると現場の意見をよく聞き、適材適所に人を配置し目標を出して任せました。後半に行くほどY理論に当てはまるようになり、成果も大きくなっていきます。全体からすると統制管理と目標管理を適切に活用した改革です。

「マグレガーのX理論・Y理論」で動機づけを実践

 マグレガーのX理論とY理論や、すでに述べた動機づけの理論を鷹山は知る由もありません。理論は知らなくても、現代の研究者が調査しまとめ上げた理論に当てはまる行動が随所にみられます。成果をあげるために真剣に考え、真摯に努力すれば、行きつくところは同じということがよくわかります。

 私が問題解決を長期間にわたって指導している企業の場合、最初の1~2年は手法・技法を教えてその通りに問題を究明してもらい、あまり自由度を与えません。最初の段階では問題解決の定石をマスターしてもらうことと、自己流の問題解決の癖を払拭してもらうためです。

 企業において、過去にもチャレンジしているのに解決しない問題は、ものの見方、考え方を変える必要があります。しかし、経験の多い人ほど考え方を変えるのは困難が多く、時間がかかります。こんなときは、図3のようにX理論的な統制の強い指導になります。

図3 X理論とY理論を使い分ける

(出所)『品質管理がわかる本』佃律志著、日本能率協会マネジメントセンター、 65頁</p><p>

(出所)『品質管理がわかる本』佃律志著、日本能率協会マネジメントセンター、 65頁

 2年ぐらいして定石を使えるようになった人たちには、テーマと目標を与え、困ったときにアドバイスしたり方向の修正をしたりします。難問の場合はもう少しレベルを上げた問題解決の教育をします。定石の基本をマスターして少しでもヤル気のある人なら、目標に対してなんとか乗り越えることができるものです。目標で動ける人に対しては、目的と目標設定のときに時間をかけて、あとはY理論に従って本人の自主性に任せていきます。

 Y理論は人を信じることから始まっています。鷹山は人を信じ、絶望している人を動機づけヤル気にして、教育することで能力を引き出しました。米沢藩の改革は、Y理論を基本思想にして展開しています。

 改革のベースはY理論ですが、鷹山や当綱は、部下を使うときは「寛猛(かんもう)の2つ」が必要で、緩やかさと厳しさ両方をタイミングよく使い分けなくてはいけないと言っています。

 これは動機づけ理論の「マグレガーのX理論・Y理論」と全く同じことです。

佃 律志著 『上杉鷹山 リーダーの要諦』(日本経済新聞出版社、2016年)第5章「改革を妨げる障壁の打破」から
佃 律志(つくだ りつし)
1943年熊本県出身。東京理科大学卒。日本能率協会を経て独立。三井物産関連事業部経営相談室、中小企業大学校、企業経営通信学院、熊本テクノ大学講師、会社役員などを歴任。中小企業診断士(1974年~現在)、ISO9001主任審査員(1994~2007年)。主な著書に『品質管理がわかる本』『トヨタ生産方式』『不良ゼロ対策のすすめ方』『数字が苦手な人の品質管理の教科書』などがある。

キーワード:経営、人事、人材、マーケティング、管理職

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