上杉鷹山 リーダーの要諦

赤字藩の立て直しに奏功した動機づけ理論 佃総合経営事務所 代表 佃 律志 氏

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鷹山は「統制管理」と「目標管理」を上手に使い分け

 マグレガーは、人間の本性は2つあるとし、それをX理論・Y理論と名づけました。

・ X理論...人間は生まれつき怠け者で、命令や支配によってしか働かないし、命令されるほうが責任もなく楽だとする考え方で、このような人には統制して管理したほうがよいとするものです。

・ Y理論...人間は生まれながらにして仕事が嫌いなわけではなく、強制しなくても目標があれば自ら働くものだとする考え方で、このような人には目標管理を行います。

 鷹山が藩主になったとき、藩は窮乏し乱れていたので、大検令を出し、重臣たちや農民に具体的に細かい決めごとをして徹底させようとしました。大検令の内容は、鷹山と当綱を中心にした改革派グループが作ったもので、国元の重臣たちと討議されたものではありません。

 鷹山は一部の人で決めたことを、藩主の強権を使って統制して管理しようとしました。マグレガーのX理論で行動したことになりますが、鷹山は国元の重臣たちから強い反発を受けました。

 家格の高い重臣たちは代々俸禄が保証されているので、積極的に働く気持ちのない人たちであり、X理論による統制管理は正しい方策でした。ただ、統制とは力の上位の人が下位の人をコントロールするもので、重臣たちは「養子の若い藩主」である鷹山をまだ十分に認めていなかったことに問題があります。

 鷹山の計画は将来のあるべき姿を描いた確かなものだったのですが、藩の体質を無視して急激に統制で管理したため改革は遅々として進みませんでした。しかし、統制することで生ぬるかった藩に緊張感が生まれ、改革が動き始めるのですから、「怠け者は統制して管理」とするX理論は鷹山の行動にも当てはまります。

 企業においても、新任の社長や工場長は、最初の1年間はじっと我慢して様子を見ている人が多いものです。待つ時間の許されなかった鷹山は、最初から走り出したため大きな抵抗に遭いましたが、誠実で本質を貫きとおす姿勢で味方を増やし種々の障壁を乗り越えていきました。この姿勢は、理論や管理方法に関係なく、組織を管理する上で重要な本質だと思います。

 鷹山の統制による大検令に反発した重臣たちへの管理は、安永2年(1773)の「七家騒動」に重い処罰を課すことで決着しました。2年後の安永4年には、「漆、桑、楮の各百万本植え立て計画」で領民に植樹の目標を与えました。

 「計画通りに植え立てなさい」と言っても木は生き物で漆木の場合、実は女木でないとできません。城内の二の丸に樹芸役場を置き、役場から派遣した専門家の指導のもとにきめ細かい植え立てを行いました。漆木を育てる者も成長に絶えず気を配る必要があり、枯れてしまえば直ちに新しく植え立て、補充しなければ罰金を取られることになります。木の実はすべて藩が買い上げましたが、植え立ての数を偽って報告すると罰則があり1本につき新しく5本を植え立てなくてはなりませんでした。

 目標を与えたY理論による管理と、統制によるX理論による管理の使い分けが上手に行われています。

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