中国大停滞

「赤い資本主義」は世界と共存できるか 経済評論家 田中 直毅

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 ところが北京についていえば、商務部にこうした申請書類が出て以降、どれだけの時間内にどういう決定が出されるのか、その不確実さはきわめて高い。これも中国の当事者にしてみれば、国内企業に対しても基準を開示する義務もなく、慣習もないことから、海外企業が提出した事案についても、あえていえば、内外無差別に手続きの不透明性を貫いているにすぎないということになろう。

 しかし、世界的にみた経営資源の効率的な使用についての国際的合意が進むなかで、M&Aの許認可手続きが恣意的に行われていることに対してどう考えるのかというテーマが残る。

 さらに、投資の自由、営業の自由は世界の大きな流れであるにもかかわらず、中国では、この面においても実質上の制限が強く残っている。たとえば、中国政府が認定する重要産業については50%以上の持ち株比率を海外企業が持つことは今日においても阻まれている。このような差別的措置がどのような時刻表の中で変更されるのかについて、中国政府は今日まで何らのコミットもしていない。

「赤い資本主義」とWTO

 このように、中国をWTOのインサイダーにしたことをきっかけとして、WTOの原則が世界第2位の巨大国によって内側から変更されつつあることにどう対応すべきかというテーマが世界的に浮上した。世界の秩序は、第2次大戦後の流れの中で新しい局面を迎えつつあるといわざるをえない。そうしたなかで、中国の「赤い資本主義」と呼ばれる国家資本主義そのものをどう捉えたらよいのかというテーマも同時に生まれた。

 中国の超高速の経済成長は、世界中のあらゆる経済人に中国の未来市場にかかわって、高い購買力の発生を印象づけた面がある。ここから購買力を背景として、中国の政府諸部門による介入が繰り返されることが続いた。

 このことのゆえに、初期には中国政府に対して強くは出られないとする対応が世界の企業に生じた。日系企業がそうした購買力を背景とした政府介入に対して戦いきれなかったのみならず、世界を代表する米国あるいはEUの企業もこの点についてはまったく同様であった。

 そこで、購買力を背景とした介入への対応が問われるとともに、わが国の個々の企業にとっては、中国の介入を嫌う「嫌中国」という気分が高まった。

 また、世界では知的所有権の尊重は当然のこととされているものの、この点についての実質上の理解が中国の内部で広がっていないという問題もある。中国投資を行おうとすれば、多くの場合、個別の知的所有権にかかわって実質上の移転を強制されるという事態が生じている。

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