中国大停滞

「赤い資本主義」は世界と共存できるか 経済評論家 田中 直毅

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 中国における内外無差別の原則の無視は、次に挙げるように、世界的に見てすでに目に余るものである。そういう意味では、反中国あるいは中国の行動に対する違和感の表明は、南シナ海における覇権主義的行動や尖閣諸島問題をきっかけとした反日暴動の以前から世界の中ですでに広がっていたといえる。

 まず、規制や審査の恣意性が指摘できる。中国の内部においても党幹部による恣意的指示によって経済における指導方針が変えられている以上、このことは中国の政権当事者にしてみれば特段違和感のあることではないだろう。しかし実際には、内外無差別の原則を無視した規制の恣意性が際立っている。

 たとえば、進出企業による営業店展開に関する政府規制がある。沿海部から経済発展の遅れた西部へと経済進出を誘導すべく「西部大開発」が唱えられる。これに協力するかどうかで全般的な店舗展開の余地が決まる、と進出企業には受け止められている。

 政府調達についても、その原則は依然として開示されていない。2008年から2009年にかけて行われた4兆元という巨額な政府プロジェクトも、政府調達にかかわる原則を欠いていたがゆえにその実施にあたって、非効率があったのみならず、新しい時代を切り拓くものに何ら結びつかなかったと総括することができよう。政府調達における原則の確立がないことにより中国自身も自らの利益を損なっているが、外国系企業にとってみれば、経営方針を確立する上できわめて難物といわざるをえない。

 また、差別的取り扱いを当然とするような政府指示が次々と出されることも、中国政府はインサイダーとアウトサイダーとを区別しているという自覚はないかもしれないが、WTOの原則を内側から崩しているという事実に相違はない。

 さらに、グローバル競争の中で世界の各企業は国境を越えた合併・統合(M&A)の実施を行い、経営資源の選択と集中を図っているが、中国ではM&Aにかかわる許認可のスケジュールがまったく不明で、またその許認可原則がいかなるものかが容易には察知できない。

 日本、米国そして欧州連合(EU)においては、市場占有率その他の基準を使い、個々のM&A行為がこうした競争秩序を根底から損なう可能性がない場合、許可を出すのは当然である。いささか疑問があるケースについては事前に合併条件に部分的処理、たとえば一部の事業部門の売却などを付すことはある。

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