そう考えると、現状では環太平洋経済連携協定(TPP)の枠の外にいるタイ、インドネシア、フィリピンなどの国々がTPPの枠組みの中で自らを鍛え直そうという意思決定に傾斜する可能性は決して無視できない。この意味においても、中国が世界の経済秩序を作る一角にいるという認定については、すでに相当割り引いて考える必要がある。
アフリカについても問題は同様である。中国が関与すればするほど、アフリカのそれぞれの国はより腐敗(more corrupt)し、より社会の自由度が減少(less free)する、という有名な問題規定がある。アンゴラやスーダンなどの特定の地域についてこうしたことが指摘されているが、全体的に見れば「中国はアフリカを食べ尽しつつある(China is biting Africa)」という受け止め方はきわめて強い。
アフリカにおいては、市場における付加価値形成の高度化は進んでいるのかという視点が重要である。中国はこの地において、資源を入手すればそれで足る、あるいはインフラ・プロジェクトを作り上げ、インフラにかかわって機材の輸出さえ行うならば現地における中国人の職場も増えようというような接近法をとる。
しかし、この地域においては、農業や軽工業を含め、新しい付加価値をどのように生み出し、そこにアフリカにおいての新しいジョブをどのように作り上げるのかというテーマが問われなければならない。
中国加盟によるWTOの変容
2012年9月の尖閣諸島問題の勃発をきっかけとして、日本にとっての中国リスク問題が全面化した。日本企業にとってみれば、中国における売り上げ増の魅力は際立っていた。2003年を起点に2011年までをみれば、日本企業への成長寄与度をとってみると、中国市場の持った意味は大きい。
この点については、中国経済の規模を2003年と2011年で比較すると、3倍以上になっていることからも明らかである。この期間の成長増分を世界単位で計ると中国の占める割合がきわめて大きい。とりわけ鋼材、セメント、塩化ビニールなどの建設用資材についていえば、世界の増分の5割から7割を中国市場が占めていた。