中国大停滞

グローバル経済下で膨れ上がる金融リスク 経済評論家 田中 直毅

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 中国経済の需給失調により、資金繰り悪化が続く状況においては、金融緩和こそが金融政策の本来の姿である。にもかかわらず、資金の対外流出を阻むためには為替レートへのてこ入れが必要との判断からドル売り人民元買いの操作が行われ、本来緩和されるべき国内の金融市場には引き締まり感が出ざるをえない。

与信増メカニズムは働かず

 こうしたクレジット・クランチ(信用逼迫)という思わぬ状況が生じ、事業会社の資金繰り悪化はさらに進むことになる。もともと金融当局の判断からすれば、預金準備率の引き下げを積み重ねなければならない状況であった。銀行にとっての流動性の潤沢化がまず先決事項だったからだ。政策金利も引き下げ、緩和持続期待をきっかけとして企業活動の積極化が生ずることを望んだ。

 ところが実際には、すでに資産運用目的の理財商品の投資家向け販売などを通じて融資平台へ資金を回すのに与してきた銀行には、潜在的な不良債権の積み上がり感覚があった。このため、政策金利の引き下げがあったとしても、新規の貸出先に対する融資増の行動はきわめて起こしにくい。与信増メカニズムは基本的に働かない状況なのだ。

 当然ながら、経済の活性化は実現しない。銀行の貸出資産の内容について十分な検査は行われないため、貸出資産としての実力は目減りしているのにもかかわらず、帳簿上はほとんどそのまま貸出資産として残ったままだ。

 発表される銀行融資残高は実体経済の収縮があるにもかかわらず、一貫して十数%の伸びを続けてきた。おそらく、融資返済ができない事業先に対する追い貸しの実施が本当のところであろう。19世紀後半の欧州で起きた連鎖倒産が起きるわけでもなく、金融不安が一挙に広がるわけでもないという状況がここには存在する。

 われわれは、こうした中国の金融政策当局が置かれた立場とグローバル経済のもとでの中国の金融調節について、もう少し一般的な記述が必要なことに気づく。それが、経済政策のトリレンマ問題だ。自由な市場においては、次の3つを同時に満たすことはきわめて難しい。すなわち、(1)柔軟な国内金融政策、(2)為替水準の安定、(3)自由な資本取引の公認の3つである。

 金融政策の自律性からすれば、景気実態が悪化した際には、金利は低下していなければならない。逆にインフレが懸念される場合には、金融政策を引き締めに転じ、金利を上昇させるというパターンが望ましい。しかし、中国で実際に起きていることは次のように記述できよう。

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