中国大停滞

エリート幹部も懸念する「中所得国の罠」 経済評論家 田中 直毅

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 また楼部長は、社会保障体制の改革は不可欠だと述べる。高齢化する人口に対してどのような社会保障サービスを提供できるのか、負担と給付との間にどのような関係を持たせうるのか、こうした課題を解決せねばならないというのだ。

 楼財政部長はスピーチの最後に、2020年までの間にこうした任務が完了できなければ、「中所得国の罠」を乗り越えることはできない、と結んだ。そして感想として、債務が過大であること、もうひとつは、いまや社会の安定と改革の進捗とのバランスがきわめて苛酷な現実として浮き出ているとの認識を付け加える。

 われわれが中国の経済社会をどのように展望し、中国社会の動向をどのように分析するのかについて考えを巡らせるとき、楼継偉財政部長の清華大学での講演はその基本に据えられるべきだ。

 中国は経済社会の発展をどのように構想すればよいのか。そこにどのような本質的な課題があるのか。中所得国の罠から脱け出るために中国社会が挑戦しなければならない諸課題の錯綜ぶりはいかなるものなのか。

 習近平総書記率いる現在の中国は、健全な経済社会の発展という点で、きわめて困難な問題を抱えており、劇的な社会体制の転換を遂げないかぎり、深刻な罠に陥る可能性はきわめて高いと考えざるをえない。

田中 直毅著 『中国大停滞』(日本経済新聞出版社、2016年)序章「中国経済 危機の構図」から
田中 直毅(たなか・なおき)
経済評論家。

1945年生まれ。1968年 東京大学法学部卒業。1973年 東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。国民経済研究協会主任研究員を経て、1984年より本格的に評論活動を始め、現在に至る。1997年 21世紀政策研究所理事長。2007年より国際公共政策研究センター理事長を務める。『手ざわりのメディアを求めて』『グローバル・エコノミー』『日本のヴィジョン』など著書多数。

(写真:有光浩治)

キーワード:国際情勢、経営、グローバル化、マーケティング、経営、企画、経営層、環境問題

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