ずっと売れる!ストーリー

人を動かすのは、感情揺さぶる「ストーリー」 湘南ストーリーブランディング研究所 川上徹也 氏

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どんな人にもどんな商品にもストーリーはある

 このようにストーリーをうまく使えば、仕事やビジネスにおいて大きな力を発揮することができるのです。

 というと、こんな反論をする方がいるかもしれません。

 「私が扱っている商品はどこにでもある普通の商品なんですよ」

 「うちの会社は小さいから、CMなんてとても打てない」

 「自分は平凡な人生を歩んできたからストーリーなんてない」

 違うんです!

 この連載でも、例に出しているのは、先程のアディダスのように大企業やヒット商品、著名人のことが多いです。

 しかし、それはわかりやすさのためにそうしているだけです。大企業で有名なスポーツ選手を起用して巨額な広告宣伝費をかけないとストーリーなんて使えない、ということでは決してありません。

 どんな人にも、商品にも会社にも、ストーリーになるべき材料は必ずあります。

 もし、あなたが「ストーリーなんかない」と思っているならば、それはまだ発見できていないだけなのです。あるいはあまりに身近な存在になってしまっているので、客観視できていないのかもしれません。

 視点を変えれば、きっと「ストーリー」は発見できます。平凡だと思っていた仕事や商品にもストーリーはあるのです。

 3人のレンガ職人のストーリーをご存知でしょうか? 色々な所でバリエーションを変えて(職業が石切工になったり、建築するものが違ったり)語られているストーリーなので、みなさんも一度くらいは聞いたことがあるかもしれません。同じ作業をやっていても、視点を変えればまったく別の仕事になるということを示すには、うってつけのストーリーですので、あえて紹介させていただきます。

 中世ヨーロッパで旅人がある街を歩いていると、3人の職人がレンガを積んでいるのが見えました。そこで彼は3人それぞれに「何をしているのですか?」と質問してみることにしました。

 1人目の職人は「ごらんの通りレンガを積んでいるのですよ。誰でもできる仕事だから1時間働いても銅貨1枚しかもらえない」と文句を言いながら答えました。

 2人目の職人は「レンガの壁をつくっています。1カ月働けば銀貨10枚になるしね。おもしろい仕事じゃないけど、家族を養わなきゃいけないからね」とあきらめたように答えました。

 3人目の職人は「町中の人が喜ぶ大聖堂をつくっています。自分が亡くなってからも、子どもや孫たちが私の仕事を誇りにしてくれると思います」とにこやかに胸を張って答えました。

 まったく同じ作業をしていたとしても、視点の持ち方ひとつでこんなにも違う仕事

になるのです。

 もしあなたが、この3人のうち誰かに仕事を頼むとすれば、誰に頼むでしょうか?

 仕事やビジネスにおいて「ストーリー」をつくるというのは、まさにこの「大聖堂」を発見するということに他ならないのです。

 あなたにも、あなたの商品にも、あなたの会社にも、きっと大聖堂はあるはずです。

川上徹也 著 『ずっと売れる!ストーリー』(日本経済新聞出版社、2016年)第1幕「なぜ、今、"仕事にストーリー"なのか?(理論編)」から
川上徹也(かわかみ てつや)
湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告会社勤務を経てコピーライターとして独立。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。また並行して舞台・ドラマなどの脚本も手掛ける。広告と脚本、2つの仕事から得た知見をもとに、「物語で売る」という手法を体系化。「ストーリーブランディング」という言葉を生み出した第一人者として知られる。また政治家の演説や経営者のスピーチなどにおける「ストーリーテリング」に注目し、著作として発表。演説分析家としてテレビ・新聞などのメディアにも頻繁に登場している。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『あの演説はなぜ人を動かしたのか』『独裁者の最強スピーチ術』ほか多数。

キーワード:管理職、プレーヤー、マーケティング、営業、経営、人材、IoT、AI

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