ずっと売れる!ストーリー

人を動かすのは、感情揺さぶる「ストーリー」 湘南ストーリーブランディング研究所 川上徹也 氏

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 例えば、サッカー界のスーパースター、リオネル・メッシ選手が自らの人生を語るスポーツ用品メーカー、アディダス社のCMなどはその典型です。

 CMは、「これが僕のストーリー」というメッシの語りで始まります。ビジュアルはストーリーの内容とシンクロしたかわいいアニメーション。メッシはそのストーリーの中で、11才のとき、成長ホルモンの分泌に異常が見つかったというエピソードを告白しています。

 メッシは身長169センチでサッカー選手の中ではかなり小柄な方です。しかし、病気が原因だったということを知る人は少なかったでしょう。

 メッシはさらに語ります。「でも小さかったおかげですばしっこく、足に吸いつくようなドリブルを習得することができた」と。そして「人生は意外にいい方に転ぶ」と締めくくり、最後にアディダスのワールドワイドのキャッチフレーズである"IMPOSSIBLE IS NOTHING"で結ばれるという構成です。

 この60秒のCMを観た視聴者は、リオネル・メッシ選手のストーリーを知ります。そして心を動かされます。もちろんメッシはその華麗なプレーで元々日本でも人気はありました。しかし華やかに見える彼にそんなストーリーがあることを知り、よりファンになった視聴者も多いのではないでしょうか?

 メッシのことがより好きになった人は同時に、"IMPOSSIBLE IS NOTHING"(=不可能なことなんてありえない)というアディダスの発信しているストーリーにも共感することでしょう。アディダスの商品のことは何ひとつ語ってはいないにもかかわらずです。

 ストーリーを通して、登場人物も企業イメージも同時にアップさせる、とても優れたCMと言えるでしょう。

 しかし、ここでちょっと冷静に分析してみましょう。客観的かつ論理的にこのCMをとらえ直してみるのです。するとある事実に突き当たります。メッシのストーリーは、アディダスの製品のクオリティとは何の関係もないということです。もちろん、"IMPOSSIBLE IS NOTHING"というキャッチフレーズも、アディダスの製品クオリティを保証しているものではありません。

 もっとイジワルな見方をすることさえできます。アディダスはメッシ選手と契約するために、ナイキと猛烈な争奪戦をしたと伝えられています。その契約金はかなり高額であったと思われます。「そんなにお金を使うのであれば、その分で製品の値段を下げるべきだ」という主張があっても論理的にはおかしくありません。

 しかし、ほとんどの人はそんな風には感じないでしょう。このCMのストーリーに心を動かされ、「そうだ。不可能なんてありえない。俺だってできる」と勇気をもらうのです。消費者の中でアディダスの商品バリューは確実に高まりました。それが人間の自然な感情の流れです。

 このように感情の動きは、ロジックを大きく超えていきます。

 感情を動かすために、ストーリーはとても有効な手段です。だからこそ仕事やビジネスでストーリーを使うのです。

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