米軍式 人を動かすマネジメント

PDCAを捨てOODAを活用して戦いに勝ち抜く 田中公認会計士事務所 所長 田中靖浩 氏

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 とくに趣味のない私ですが、昔からオーディオだけはこだわりを持っています。いま事務所には、Bang & Olufsen というデンマーク製のオーディオを入れています。B&Oはインテリアとしてもカッコ良く、それでいて音も最高。ただし価格は非常に高い。フルセットで100万円以上掛かりました。

五感刺激で顧客を感動させる奇襲の発想

 そこまでは許します。ただ、あとで注文した「リモコン」の価格にはたまげました。なんとリモコンが6万円! どうしてリモコンがこんなに高いんだ、と驚きましたが、好奇心もあって購入。それを手にしたときの驚きは今でも忘れられません。

 なにがスゴいって、重いんです。従来のリモコンをはるかに超える「重さ」。ここで私は不本意ながら、6万円の価格に「これはしょうがない」と、納得してしまいました。リモコンがカッコいいだけでなく、「重い」というのはまったくの想定外。脳の中で「想定外」が発生すると、高い価格を思わず納得してしまうのです。

 軍事における機動戦は、敵の重心を物理的に破壊して「まいった」と言わせるのではなく、敵を心理的な思考停止に追い込んで「無力化」することを目的にします。それにしたがえば、ビジネスの機動戦は顧客を感動、驚き、サプライズによって良い意味での「思考停止」に追い込み、いつもと違った意外性で攻める作戦です。

 これで戦うには、品質・性能といったスペック勝負だけでなく、顧客の心をわしづかみにする「意外性」を提供しなければなりません。B&Oの6万円リモコンには機動戦に向けた大きなヒントがあります。

 それは、物理的な性能を超えた「五感刺激」です。コスト削減に明け暮れ、多機能ばかり求める消耗戦では、どうしても「ボタンだけ多い、安っぽいリコモン」になりがち。誰も気づかなかった「重さ」を勝負ポイントにするだけで、顧客は「おお!」と感動します。そのポイントを見抜ける観察眼があるかどうか。前回紹介したリンドは、機動戦を適切に戦うには、「見ることよりも、感じることのできる指揮官」が求められるとしています。

 私が見たところ、スターバックスも五感刺激がうまいなあ、と感心します。スタバが登場する以前、アメリカのコーヒーショップでは1杯1ドルが相場でした。それを3倍近い価格に引き上げるために行ったことも「五感刺激」です。

 それまでのコーヒーチェーンは、白やパステルカラーの店が多かったようです。そこでスタバは黒やブラウンといった濃いめの色を基調にしました。またお客さんが店に一歩足を踏み入れた瞬間に「良い香り」が漂うよう、コーヒーマシンを前面に移動。さらには、木製の固いイスがほとんどだった従来店とはちがったソファーを用意しました。

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