米軍式 人を動かすマネジメント

敗北したイラク軍と東芝事件の共通点とは? 田中公認会計士事務所 所長 田中靖浩 氏

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 近年、日本の会社では「計画による管理」を強めています。そこではまず、トップが目指すべき「計画」をつくり、それを現場が実行したかどうか「管理」します。いまのような不況では、頑張ってもなかなか儲けがでません。だからこそ会社はせっせと計画をつくるのです。その進捗は、各種情報によって細かく管理されます。

悲劇的な結果をもたらしうる「計画管理」

 このような「計画による管理」はいまや経営の常識として誰もが納得していますが、この満場一致の結論にこそ、大きな落とし穴があるように思います。「計画による管理」は、一歩間違うと悲劇的な結果を招きます。

 では、「計画による管理」が成功する場合と、失敗する場合の分かれ目はどこに存在するのでしょうか? その手がかりを探るため、湾岸戦争について振り返ってみましょう。米軍を中心とした多国籍軍にあっけなく敗れたイラク軍には、「計画と管理」をめぐる2つの敗因がありました。(1)「計画通りに進まなかった」ことと(2)「兵士が自主的に動けなかった」ことです。

(1)計画通りに進まなかった

 湾岸戦争の当初、イラク軍はクウェートが攻撃対象になると読んで作戦計画をつくりました。しかしイラク軍の読みは外れ、多国籍軍はイラク領内を直接攻撃しました。イラクの作戦計画は間違っており、完全に裏をかかれたかたちになりました。

 どんな戦争でも「相手がどう出るか」を事前に知ることはできません。だとすれば、当初の計画がまちがっていた場合、それをただちに修正できる柔軟さと臨機応変さがなければなりません。イラク軍は計画が間違っていたにもかかわらず、それに対応した柔軟な修正ができなかったのです。

(2)兵士が自主的に動けなかった

 開戦当初、防空システムと通信システムを破壊されたイラク軍は敵が見えず、自軍の間の交信も困難な状況に陥りました。出撃命令を待っていた兵士たちが混乱によって出撃できない例もあったようです。上官の命令に絶対服従のイラク兵士たちは自主的に動くのが苦手でした。

 かつてのソ連軍にも見られた傾向ですが、指揮官が自分の部下を信用しない軍隊では、部下の勝手な行動を禁じます。ソ連式の訓練を受けていたイラク軍兵士たちにとって上の命令は絶対であり、命令なく独断で行動することには不慣れだったようです。命令に絶対服従の空気が強くなりすぎると、兵士は自主的な行動が取れなくなります。

 イラク軍に見られる2つの敗因は、昨今の日本企業にも当てはまるように思います。たとえば2015年に起こった東芝不正会計事件。この事件では無理な計画を達成したいトップの指示のもと、善意の社員たちが粉飾に巻き込まれました。これまで粉飾といえば、一部の当事者が悪意をもってコソコソと数字をいじるのが一般的でした。

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