米軍式 人を動かすマネジメント

先が見えないビジネス環境で戦うための機動戦 田中公認会計士事務所 所長 田中靖浩 氏

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 先日、東京駅に行ったところ、大がかりなテロ対策の訓練が実施されていました。この訓練は「東京駅で自爆テロが発生し、サリンがまかれた」との想定で行われたようです。さらにはテロリストが人質を取って逃走、コンビニを爆破して倉庫に立てこもったとのシナリオで、SAT(特殊急襲部隊)が制圧する訓練まで実施されたとのこと。「日本でもこんな訓練が行われるようになったのか」という私の驚きはさておき、国際サミットやオリンピックの開催に向け、わが国も真剣にテロ対策を考えねばならなくなったようです。

「戦場の霧」と計画の有効性

 テロ対策を講じる上で、あらゆる想定をしておくのは大切なことです。想定される攻撃のバリエーションを増やしておくことで、慌てずに適切な対応ができます。しかし、本気でテロリストが日本への攻撃を企てるとして、その想定通りに彼らは攻撃を仕掛けてくるでしょうか? とてもそうは思えません。巧妙に「想定外」のかたちで攻撃を仕掛けてくる敵がいるはずです。その場合、「想定外」のアタックに対して臨機応変

な対応が取れるかどうかが、対応のカギになります。

 「想定される攻撃」に対して、適切かつ機敏に行動が取れること。

 「想定外の攻撃」に対しても臨機応変な対応が取れること。

 このための訓練は似て非なるものです。とくに「想定外」への対応は、本当にむずかしいです。

 この点、軍事では近年、アルカイダやISをはじめとするテロリストやゲリラとの戦いが発生しています。昔の大国同士の戦争のように敵が一国であり、その動きがある程度読めるのであれば、事前の作戦計画を立て、それに基づく行動管理が有効でした。

 しかし対ゲリラ戦やテロとの戦いのように、「敵がどこにいるか見えない」そして「敵が何をしてくるかわからない」戦いでは、そもそも事前の作戦計画をつくれません。仮に作戦計画をつくったとしても、敵はおそらくこちらがまったく予想していない「想定外」の攻撃を仕掛けてきます。

 このような戦争における不透明性は「戦場の霧」と呼ばれます。どれだけスパイを使い、科学技術を駆使して情報を集めたとしても、戦場の霧が晴れることはありません。そのような戦いにおいて事前の計画に固執し、それに基づいて兵士の行動を厳しく管理する体制には危険が伴います。「戦場の霧」が深い場合には、兵士が自主的に動く柔軟・臨機応変な対応で臨まねばなりません。

 逆にいえば、敵に「想定外」の状況をつくることができれば、こちらは圧倒的に有利な立場に立つことができます。とくに相手が「想定外に弱い」敵であればなおさらです。

 湾岸戦争において、米軍はそんな「新たな戦い」に目覚めたようです。イラク軍を破った米軍は、味方の損害を最小限に抑えつつ、短時間で勝利しました。「クウェートを攻撃してくる」と予想したイラクの裏をかき、その防空システムと指揮命令システムを破壊する、「敵に実力を出させない=敵に想定外をつくる」戦いで鮮やかに勝利した米軍。この勝利体験は、米軍にとって大きなターニング・ポイントになったようです。

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