企業価値4倍のマネジメント

「創業者目線」の復活で再生を果たす 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー

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健全な対立を社内に起こす仕掛け

 先の事例で取り上げた製薬企業の社長は、さらに面白いことを言っています。社内での「報・連・相(報告・連絡・相談)」の廃止です。

 「報・連・相」とは、実は社員の巧妙なリスクヘッジだというのです。つまり、上位者に事前に話すことによって、上位者の意向を確認し、上位者に受け入れられやすい提案をするというわけです。裏返せば、自分の頭で考えることを最初から放棄している、あるいは自分からリスクをとろうとしていないのです。

 その社長は「報・連・相」をしてくる社員に、「職務権限で定めた範囲のことであれば、思い切りリスクをとって仮に失敗したとしても会社はつぶれないように設計してある。だから、自分の頭で考え、自分でリスクをとってほしい」と話すそうです。

 創業者目線の復活には、トップが自ら行動で示すばかりではなく、社員に自らの頭で考え「わが事」として行動させることも重要なのです。

 同様の発想から、最も優秀な社員を初進出する海外市場に単身送り込む企業もあります。そこではホームマーケットのようなブランド認知も、消費者の支持もありません。ゼロから立ち上げる創業の経験が、最も有効な社員の能力開発だという考えです。

 社内でこのような「ミニ創業」の機会を積極的につくり、創業者目線を持つ人材を増やしていくことも重要でしょう。

 別の企業の社長は、社内にバトルをつくるのが自分の役目だと言います。クリエイティブなアイデアで勝負する企業なのですが、アイデアを出す社員とその上司の徹底的なバトルを奨励しています。そして上司の意見や話し合いではなく、すべて顧客の意見で決着をつけるのがルールです。

 優秀な社員が増えると、お互いのプライドを傷つけないためにあまり意見を言わず、中途半端な意思決定をしがちです。この企業では、あえて健全な対立を社内に起こす仕掛けをつくり、その解決も顧客視点で行う原則を徹底しているのです。

 これはリーダーの行動ではなく、仕組みの中に「創業者目線」を生むメカニズムを埋め込んでいるのです。

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