企業価値4倍のマネジメント

「創業者目線」の復活で再生を果たす 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー

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無難で中途半端な妥協ではなく、正しい議論や対立が必要

 企業が官僚化する理由についての考察を進めましょう。

 日本企業に多い固定的な雇用制度も、官僚化の原因です。日本では入社した企業に長く勤めるというのがまだ主流です。また、ローテーションによって社内のいろいろな部署に異動します。そうすると「今日の敵は明日の上司」といったことが起こるわけです。これも正しい議論や対立を避け、無難な着地を探る強いインセンティブになります。日本企業では、報酬というよりも、出世することがモチベーションになります。一国一城の主として差配することができるようになる、というのが「出世」の実感になるわけです。

 しかし、職制上の上位者が常に正しい判断ができるとは限りません。現場から離れ、自分の経験した知識や専門性とは異なる分野で行う意思決定は容易ではありませんが、上位者であるということでさばいているとすれば、これは企業が官僚化している証拠です。

 企業の成長に伴って製品や事業の数が増えると、対象とする市場の数も同時に増えます。結果的にマトリックス組織にならざるを得ません。マトリックス組織*になると、必然的に地域軸と製品軸の間でのさまざまな調整業務が増え、同時に対立も増えます。

 そしてその対立を解決するために膨大な労力が使われるようになります。対立しても正しい結論が導かれればよいのですが、ここでも中途半端な妥協が行われるリスクが多くあります。

 日本企業は成長を求めるがゆえに、事業を多角化したり買収したりするケースも多く、これがさらに複雑化に拍車をかけるのです。自社のコア領域外に事業を増やすことは組織を複雑化するだけでなく、知見が浅い分野で誤った判断を繰り返してしまい、その修復に予想以上の人手を取られるという悪循環も引き起こしかねません。

 最後にもう1つ、官僚化の原因を挙げるとすれば、ある程度成功してくるとどうしても生まれてくる「この程度でよいのではないか」という安定志向です。これも「勝つ」ことにこだわる創業時の精神を希薄化させてしまうのです。

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