企業価値4倍のマネジメント

「真実の瞬間」となる顧客接点を見極める 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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異部署が顧客の利益を一緒に考えることの成果

 では、組織横断的な取り組みの推進によって成果をあげた日本での事例を紹介します。

 1つ目は、ある物流関連企業です。その会社では支店ごとに担当エリアが決まっていました。そのためエリア境界付近の顧客にとっては担当支店より隣の支店のほうが近いという場合もありますが、商品は担当支店から届けられていました。

 通常配送であれば特に問題ありませんが、緊急配送ではそうはいきません。当該地域の顧客に対する緊急配送サービスは、競合に大きく劣っていました。

 支店の担当者や支店長は問題に薄々気づいていましたが、隣の支店から配送するには在庫管理や数字の記録の仕方などイレギュラーな手続きが必要になり、また前例もないことから、実現には至っていませんでした。

 ところが調査をした結果、そのことが批判理由としてクローズアップされたのです。批判客の中には大口顧客もいること、物流と営業が共同で検討した結果それほど難しいオペレーションではないことなどを確認し、重要顧客の緊急配送サービス利用時には支店をまたいで配送することにしました。そういった取り組みの結果、当該支店のNPSは大きく向上しています。

 もう1つの事例、アメリカン・エキスプレスでは、NPSを上げる施策の1つとして、顧客との重要な接点であるコンタクトセンターと商品開発部門の組織横断的な取り組みである「スピーチコンテスト」を実施しています。

 これは、コンタクトセンターで電話応対するスタッフが自社のカードを「友人と話す気持ちで」顧客に薦めるスピーチを競うものです。開発担当者から苦労話を直接聞く機会などを通して商品の理解を深め、「何を伝えたいか」を各担当者が考えることで、マニュアルの復唱ではない商品説明ができ、それが顧客への感動体験の提供につながるようになりました。

 組織横断的な取り組みを行う「場」は多くの場合、経営主導で仕掛ける必要があります。異なる部署の社員が顧客の利益を一緒に考えることで、「顧客起点」「組織の利益より顧客の利益」という価値観を上位に置く文化が醸成されていきます

火浦 俊彦+ベイン・アンド・カンパニー編 『企業価値4倍のマネジメント』(日本経済新聞出版社、2016年)第6章「顧客ロイヤルティ向上で成長を実現する」から
火浦 俊彦(ひうら としひこ)
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン会長 兼 パートナー。
東京大学教養学部卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程(MBA)修了。日本興業銀行を経てベインに参画。25年以上にわたりさまざまな分野において、日米欧の企業に対するコンサルティング活動に携わる。直近では企業のM&Aに数多く関係し、企業の統合支援にも深く関与。主な著書に『リピータビリティ』(訳、プレジデント社)『M&A賢者の意思決定』(訳、ダイヤモンド社)『勇気あるトップが企業を変える』(共著、ダイヤモンド社)がある。

ベイン・アンド・カンパニー
1973年米国ボストンで創設、現在世界34カ国に53拠点のネットワークを展開している世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、営業、マーケティング、管理職、ものづくり

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