企業価値4倍のマネジメント

「真実の瞬間」となる顧客接点を見極める 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

経営主導の組織横断的な取り組みで、企業文化を顧客志向に

 企業文化を顧客志向・顧客起点に変えるには、フィードバックループ、コーチングとラーニング(学び)の場の設定が重要ですが、さらに大きな成果を出すには組織横断的な取り組みが必要となります。顧客接点を担当する現場の個々人の努力が顧客ロイヤルティ向上の基本となりますが、それだけでは限界もあります。ところが、それ以上の取り組みにしようとすると「組織の壁」という大きな問題に往々にして出くわします。

 よくあるのは、顧客満足に関する取り組みをカスタマーサポートなど一部の部署の責任としてしまうケースです。

 たとえば、ある日本企業ではコールセンターの取り組みとしてNPSを始め、特に購買金額・頻度の高い顧客へのアプローチの差別化で成果をあげましたが、NPSをさらに向上させるには商品企画・開発にまで踏み込む必要がありました。しかし同社では昔から社内で最も影響力のある商品企画・開発の部署が、「独自に顧客の声を集めている」「顧客のことは十分わかっている」という理由で、新しい顧客調査は不要と主張しました。その結果、大きな機会を前にしているにもかかわらず、本格的な取り組みには至っていません。

 事業部と販売、営業と物流など、機能分化しているところほど機能間で責任を押しつけあいがちです。また、顧客と直接接点のある部署には顧客志向の考え方は受け入れられやすい一方、そうでない部署はあまりピンと来ないという傾向も目にします。

 多くの機能部署は、それぞれ特有の指標で成果や貢献を測っています。そのため、より幅広い顧客体験と自部門の仕事の関連付けが難しいと思われているようです。

 個々の組織では誰もがまじめに改善に取り組んでいますが、顧客視点で見るとその改善方向のピントがずれていたり、部署によって一貫性がなかったりということがあります。「組織の壁」は組織が複雑化するほど厚くなります。「顧客起点」「組織の利益より顧客の利益」という価値観に経営や部署のトップがコミットし、経営努力として組織横断的な取り組みの場の設定や動機付けを行うことが必要です。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。