企業価値4倍のマネジメント

「真実の瞬間」となる顧客接点を見極める 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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 このように、ある顧客接点を重視したかどうかで顧客ロイヤルティに差がつくことは多々あります。多くのビジネスプロセスは、企業側の論理や短期的な効率の観点からつくられています。重要な顧客接点を見落としていないか、再度チェックしてみるべきでしょう。

重要顧客接点を分析的に把握し、重点的に投資する

 顧客ロイヤルティの観点から重要な顧客接点を把握することが大事だと述べました。実際ロイヤルティリーダー企業は重要顧客接点を分析的に把握し、そこに重点的に投資して成果をあげています。

 たとえばあるクレジットカード会社では、カード紛失時の対応が顧客ロイヤルティに影響することがわかったため、迅速に代替カードを再発行する仕組みの構築に積極投資し、大きな成果をあげました(図表1)。

図表1 顧客体験全体から、ロイヤルティに大きく影響する「真実の瞬間」を生み出す重要顧客接点を特定する

出所:ベイン・アンド・カンパニー

出所:ベイン・アンド・カンパニー

 また、ある保険会社では、審査を経て保険金が下りる際の体験が極めて重要な顧客接点であることと同時に、申請書類の煩雑さが顧客ロイヤルティを大きく下げていることも判明しました。そのため書類・プロセス共に簡易なものに変更し、大幅にNPSを改善しました。

 こうした重要な顧客接点においては、巨大投資だけが有効な施策とは限りません。細かい顧客対応の差異の積み重ねが違いを生むことにも留意する必要があります。

 たとえばある家電メーカーでは、修理対応が重要な顧客接点だとわかりました。その接点での顧客心理を掘り下げると、単に迅速な修理というだけではなく、完了して引き渡すまでのやり取りのきめ細かさが大きく影響していたのです。

 たとえば修理完了まで長期間かかることを事前に説明した場合としなかった場合とでは、NPSのスコアは13ポイントも違いました。さらに、期日通りに修理が完了しなかったとしても、そのことを事前に顧客に伝えたかどうかで大きく差が出たのです。

 当たり前のことのように思いますが、現場の顧客対応にはバラつきが生じているのが現実です。バラつきを小さくするのは経営の責任です。

 重要なことは、「真実の瞬間」となりうる顧客接点について、経営と現場が共通認識を持ち、そこに組織として意識を集中することです。

 経営は重要な顧客接点に優先的に経営資源を配分し、あるべき顧客体験の水準を示す必要があります。その上で顧客接点の担当者が、最低水準の顧客体験は必達の意識で取り組み、さらに期待を超える「真実の瞬間」を目指すようになれば、その企業は顧客ロイヤルティリーダー企業となるでしょう。

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