企業価値4倍のマネジメント

「真実の瞬間」となる顧客接点を見極める 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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 「顧客第一」とは、よく聞くフレーズですが、顧客満足度を正しく測るのは難しいことです。ベインでは指標の1つとして、「その製品やサービスを友人や同僚に勧めたいかどうか」を測る「NPS(※1)」を重視しています。この指標を調べると同時に、顧客との対話を始めて、顧客体験について深く掘り下げた洞察を持つことが重要です。

(※1)NPSはネット・プロモーター・スコア、またはネット・プロモーター・システムの略。ベインが開発した、製品やサービスに対する顧客ロイヤルティの度合いを示す指標。「親しい人に薦める可能性はどのくらありますか?」という質問に0~10点で回答してもらい、9~10点と回答した顧客を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」として分類。推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出する

「重要な顧客接点」を見極め、重視する

 すべての顧客接点を棚卸しして時系列に顧客の感情がどう動いたかを調べると、顧客ロイヤルティの観点から重要な顧客接点や、具体的な顧客体験の内容がわかります。

 その結果、重要な顧客接点が企業側からは必ずしも重視されていないとわかることもあります。製品やサービスの購買プロセスにおいて、専門性や効率性という観点から顧客対応担当者を替えることがよくありますが、ロイヤルティの観点からはマイナスになることがあります。

 たとえば指輪をカスタムメイドする際、接客担当者は顧客のファッションの好みやライフスタイルに至るまで話し込みます。顧客視点でデザインできるだけでなく、顧客にとっては「同じ立場で考えてくれている」という安心感やスタッフとの信頼関係が生まれ、購買に至ります。

 顧客は後日できあがった指輪を店舗に引き取りに行きますが、ここでの対応が顧客ロイヤルティを大きく左右します。多くの店舗では最初の担当者とは別の人が引き渡しに出てきます。最初の担当者は顧客対応スキルが優れているので、新規顧客対応をしていたほうが販売数字を上げられるからです。

 ところが顧客は購入時に信頼できると感じた担当者からの対応を期待しているため、まずここでがっかりします。また、イメージと異なる場合、発注時のやり取りがわからないスタッフの対応では一気にフラストレーションが高じてしまいます。

 一方で、一部の店舗では引き渡しの際に最初に対応した担当者が必ず顔を出すようにします。そこにちょっとした演出も加えることで、顧客にとって忘れられない瞬間にするのです。これが「真実の瞬間」です。この顧客がこのブランドのファンになることは言うまでもないでしょう。

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