企業価値4倍のマネジメント

誰でも「心を奮い立たせる」リーダーになれる 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー

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 一方、ある通信業界のCEOは相手と同じ目線に立ち、感情を素直に表に出すことによって、人の心を動かす名人であったように思います。常に新しい事業機会を求めて何事にも強い好奇心を示し、年齢や役職の差なくどの社員の話であっても目を輝かせて聞いているその姿は、まさにインスピレーショナルで、心を動かされるものでした。

 この2人のスタイルはまったく対照的ですが、共通しているのは自らが自然に秀でている能力を核としてそのリーダーシップスタイルを伸ばしているという点でしょう。我々が自らのリーダーシップスタイルを考える時も、自らが自然に秀でている能力を核とすべきなのです。

自分の強みを見つけ、それを伸ばす

 「心を奮い立たせる」リーダーシップの4つ目の特徴は、「個々人の強みに依拠している」という点です。

 誰かからインスピレーションを受けて自分の心が奮い立たされる時、多くの場合それはその人が恒常的に持つ強みによるものです。一時的な取り組みや、付け焼き刃の行動ではなく、自然に恒常的に行う行動によってこそ、人は心を動かされるのです。

 我々はアンケートを分析することで、強みが他の弱みを中和する、ということを定量的にも検証しました。

 リーダーシップの要素として挙げられた33の核、それぞれについての個人の力量を周りに評価してもらい、母集団の上位10%、下位10%に入った場合をそれぞれ強み、弱みと呼ぶとします。

 強みも弱みもない人が「心を奮い立たせる」確率を基準値とすると、強みを持たず弱みを持つ場合、その確率は2~6割程度に下がります。ただし、1つでも強みがある場合、弱みの数にかかわらず1.4~1.6倍の確率で「心を奮い立たせる」ことができていました。

 すべての面において完璧でなくても、自分の強みを見つけ、それを伸ばすことによって、「心を奮い立たせる」リーダーになれるということです。

 では、どうすれば自らの強みを正しく理解できるのでしょうか。そのためには、自己認識だけでなく、他人から見た自分の強みを聞くことが重要です。

 さきほども述べたように、ベインでリーダーシップ研修を行う際には、事前に研修を受ける人の上司や部下、同僚にアンケートを行い、第三者から見た個々人の強みを洗い出しておきますが、そのアンケートの中で「責任感」を強みとして評価されたコンサルタントがいました。

 彼女にとって仕事に責任感を持って取り組むことは当然のことであり、それが「人を奮い立たせる」ための要素となりうるという意識はありませんでした。しかし、アンケートの結果、彼女の「責任感」の強さは母集団の中でも際立っており、人々に良い感銘を与えているということがわかったのです。この気づきの下、彼女は「責任感」に力点を置いたリーダーシップを探求しています。

火浦 俊彦+ベイン・アンド・カンパニー編 『企業価値4倍のマネジメント』(日本経済新聞出版社、2016年)第5章「社員の心を奮い立たせる力を身につける」から
火浦 俊彦(ひうら としひこ)
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン会長 兼 パートナー。
東京大学教養学部卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程(MBA)修了。日本興業銀行を経てベインに参画。25年以上にわたりさまざまな分野において、日米欧の企業に対するコンサルティング活動に携わる。直近では企業のM&Aに数多く関係し、企業の統合支援にも深く関与。主な著書に『リピータビリティ』(訳、プレジデント社)『M&A賢者の意思決定』(訳、ダイヤモンド社)『勇気あるトップが企業を変える』(共著、ダイヤモンド社)がある。

ベイン・アンド・カンパニー
1973年米国ボストンで創設、現在世界34カ国に53拠点のネットワークを展開している世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、営業、マーケティング、管理職、ものづくり

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