企業価値4倍のマネジメント

「絶対に勝つ」べき市場で敵を圧倒する 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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 背景には、圧倒的な累積経験量の違いによるコスト、ノウハウ、顧客基盤の差、圧倒的ナンバーワンだからこそ可能な市場への影響力も関係します。

 たとえばオンライン旅行業で国内1位の楽天トラベルは、圧倒的な顧客フィードバック情報をもとに宿泊施設にコンサルティングを行い、一方で宿泊施設に課す手数料を引き上げることで高い収益性を実現しています。

 スマートフォン(スマホ)用半導体チップで世界1位のシェアを持つクアルコムは、自社チップの周辺で併用する電子部品サプライヤーの一部に「推奨メーカー」としての地位を与える一方、最新技術情報の共有などで協力を求め、自社の製品の開発に生かしています。

 しかし、現実にはこの高い市場シェアの持つ優位性を十分に生かさず、収益実現機会を逃している企業をみることも少なくありません。その多くは自社の相対市場シェアが示唆する収益性ではなく、業界全体の単純平均収益性と自社の収益性を比較し、自社の収益性は十分な水準であると錯覚してしまうことや、より市場シェアや収益性の低い事業に経営上の焦点をあて、市場リーダーとして収益をあげている事業に十分な投資や改革が行われないことに原因があります。

 市場リーダーは、単純な「業界平均」とは本来目指すべき収益性の水準が一段も二段も異なることを自覚すべきです。さらに、市場リーダーだからこそとりうる戦略の自由度は非常に大きいこと、そして自社が複数の事業を持つ場合には、市場リーダーシップを持つ事業へのヒト・モノ・カネの投資優先度を下げることは企業全体の投資効率を低下させ、ひいてはその事業のリーダーシップを危機に陥れる可能性もあることを十分に理解する必要があるのです。

火浦 俊彦+ベイン・アンド・カンパニー編 『企業価値4倍のマネジメント』(日本経済新聞出版社、2016年)第1章「正しい戦略で、大きな結果を出す」から
火浦 俊彦(ひうら としひこ)
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン会長 兼 パートナー。
東京大学教養学部卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程(MBA)修了。日本興業銀行を経てベインに参画。25年以上にわたりさまざまな分野において、日米欧の企業に対するコンサルティング活動に携わる。直近では企業のM&Aに数多く関係し、企業の統合支援にも深く関与。主な著書に『リピータビリティ』(訳、プレジデント社)『M&A賢者の意思決定』(訳、ダイヤモンド社)『勇気あるトップが企業を変える』(共著、ダイヤモンド社)がある。

ベイン・アンド・カンパニー
1973年米国ボストンで創設、現在世界34カ国に53拠点のネットワークを展開している世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、営業、マーケティング、管理職、ものづくり

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