企業価値4倍のマネジメント

「絶対に勝つ」べき市場で敵を圧倒する 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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 また、「絶対に勝つ」領域を設定しないことで、顧客ニーズを掘り下げない、勝負をしない、といった「逃げ」にもつながりかねません。顧客セグメンテーションは経営資源配分の手法であるとともに、企業文化改革の契機にもなるのです。

ニーズや行動様式、ライフスタイルに着目

 「絶対に勝つ」市場を特定するための顧客セグメンテーションは、やり方を間違えると、セグメントを特定したものの具体的な戦術や資源配分につながらなかったり、判断を誤ったりしがちです。

 特に問題となるのが、セグメンテーションの「切り口」です。地理的変数や、個人であればデモグラフィックス変数(年齢、性別、所得、職業など)、法人であれば企業規模や業界などを切り口とすることは少なくありませんが、往々にして具体的行動や経済価値につながらず、不十分な結果に終わりがちです。また、極めて情緒的なコンセプト(保守的、革新的など)で顧客セグメンテーションをしても、継続的に計測することが不可能になり、これも行動につながりません。

 より優れた顧客セグメンテーションでは、顧客のニーズや行動変数、ライフスタイルなどに着目しつつ、計測可能な切り口で市場と顧客を分割します。

 たとえばある大手ホテルチェーンでは利用頻度と1回当たり平均滞在期間から顧客を分けたところ、平均滞在期間は3~4日と中程度ながら、利用頻度が非常に高い顧客層が高収益顧客の大半を占めていることがわかりました。高収益顧客というと所得の多い顧客や単価の高い顧客を想起しがちですが、利用頻度が顧客収益性を左右することが顧客セグメンテーションで判明したのです。

 これにより同チェーンでは利用頻度の高い顧客に好みの部屋の優先手配、ドライクリーニングや子どもの無料宿泊などを提供し、見事に顧客の定着と利用増加に成功しました。年齢や性別などの外形的な切り口ではなく、顧客の行動をベースにセグメンテーションをし、顧客が頭の中で自社を想起し差別化するためのポイントに投資することで、「絶対に勝つ」べき顧客層でのシェア向上に成功したのです。

 中長期的には市場環境や顧客ニーズも変化するため、適宜ターゲット市場を見直す努力も必要です。その前提の上で、意味のある顧客セグメンテーションをし、注力すべき市場・顧客で徹底して勝つ手立てを講じることが、戦略を成功に結びつけるのです。

「絶対に勝つ」べき領域で、差別化を徹底する

 プロフィットプール分析と顧客セグメンテーション分析に基づき、自社が「絶対に勝つ」べき領域を具体的に定めることが、優れた経営戦略策定の必須要素であるということを述べてきました。一方で、誰であろうと顧客は顧客なのだから、広くカバーしたほうが機会損失が少なく、顧客を取り逃がしたときのダメージも小さいのではないか、との見方もあるでしょう。

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