企業価値4倍のマネジメント

社員の心を奮い立たせる力を身に付ける 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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 「職務を遂行する」能力(パフォーマンススキル)と「心を奮い立たせる」能力(インスピレーショナルスキル)は独立した能力であり、個別に育成・評価することで、双方を伸ばすことができます。

 しかし、この2つを混同しているケースがよくみられます。戦略的な思考ができているか、プロジェクトマネジメントができているか、といった「職務を遂行する」能力と、周囲の人の話をしっかり聞いているか、新しい考え方やアイデアに対してオープンか、といった「心を奮い立たせる」能力を同時に取り扱うプログラムは多くありますが、同じ評価基準や期待値でこれらを測ることができるか考えた時、その限界は明らかでしょう。

数値化できず、画一的なモデルもない

 「心を奮い立たせる」能力はよく、単純に職務を遂行するために必要な能力の1つと考えられます。しかし、我々は「心を奮い立たせる」能力と「職務を遂行する」能力を分けて考えることによって初めて、リーダーシップを健全に育成できると考えています。この2つは車の両輪のように共にリーダーシップを成り立たせる能力ですが、根本的に異なるものです。

 「職務を遂行する」能力は具体的かつ測定可能なもので、適切に定義された「結果」を出すために求められるスキルです。予算を立てるにしろ、特定プロジェクトの人員を集めるにしろ、通常「正しいやり方」が存在し、「結果」を基にその能力の高低も測定することができます。

 また、これらの「職務を遂行する」能力は特定の業務成果に関連したものであり、理論的に学べるものです。正解や最善の方法が存在し、スキルの習得度を測ることが可能です。必要となるスキルはそれぞれの職務内容や役割によって異なります。たとえば、正しい意思決定をする、プロセスを設計し人員を配置する、などが挙げられるでしょう。

 一方、「心を奮い立たせる」能力は、数値化するのが困難です。それを拙速に数値化せずに、まずは数値化できない能力としてとらえる必要があります。

 チームのロールモデルになる、周囲にエネルギーを与える、部下の成長に投資するといった「心を奮い立たせる」能力には、画一的に全員が目指すべきモデルはなく、個々人の自己認識が必要となるからです。一方、どの業務や役割を担っていても共通して必要になるスキルでもあります。

 すなわち、「心を奮い立たせる」能力は漠然としており、極めて個人的で、評価も難しいということです。結果、その能力を育成するための満足のいくプログラムはまだほとんど存在していません。

 「心を奮い立たせる」能力は、現代のビジネスにおいて必要不可欠であるにもかかわらず、リーダーシップ研修上、その重要性が正しく反映されていないのです。

戦略とリーダーシップモデルと企業文化の関連性が重要

 「心を奮い立たせる」能力によってさまざまなメリットがあることに気づいている企業は多いでしょう。「心を奮い立たせる」リーダーの下で働く従業員は、仕事への満足度が高く、献身度が高く、生産性も高い上に、離職率は低いという調査結果があります。企業と従業員の間で、望むべき互恵関係が生まれているのです。

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