企業価値4倍のマネジメント

社員の心を奮い立たせる力を身に付ける 火浦 俊彦氏+ベイン・アンド・カンパニー 

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(1)企業の優位性が商品自体から顧客体験にシフト

 優れた製品やサービスを提供することは変わらず重要ですが、顧客をただ満足させるのではなく、その期待を超えるような体験を提供することが求められています。

アップルの成功は、iPhoneという製品の優位性だけでなく、AppleStoreやAppStoreでの顧客体験によるものでしょう。現代では、顧客と日々接点を持つ現場社員こそが、顧客体験の品質を決定し、自社の競合優位を決めていくのです。現場社員の心を奮い立たせることができない企業は、勝ち残ることができません。

(2)仕事の性質の変化

 職務がより複雑になり、個々人のライフスタイルが多様になる中、部門を超えた取り組みが増えているだけでなく、在宅勤務で仕事を自己管理するなど、今までにないさまざまな働き方が求められるようになりました。その結果、明確な上司・部下という関係がなく、指揮系統の不明瞭な相手と働くことが増えています。

 こうした状況では、既存の役職に依拠した指揮系統だけでは、効率的に作業を進めることが困難です。代わりに、従業員それぞれが自身の士気を高め、仕事を終わらせる責任を感じる必要があります。また、その情熱を他の従業員と共有する環境を整備する必要もあるのです。

(3)ミレニアム世代の労働市場への登場

 この世代は企業の理念や提供価値に賛同することで熱心に働くのであり、高額な報酬や昇進のためだけに働くのではありません。ミレニアム世代(※1)は「自分にとってどのような価値があるか」を重視します。彼らを採用し、やる気にさせるためには、彼らの「心を奮い立たせる」ことが必要です。

(※1)1980年代から2000年初頭生まれの世代のこと

「職務遂行能力」と「心を奮い立たせる能力」は個別に育成・評価

 現代において仕事を効率的に進めるには、既存のリーダーシップスキルのみに依拠していてはなりません。役職による指揮系統が通用しない働き方が増え、報酬による動機付けも短期的な解決策にしかならない中で、「心を奮い立たせる」ことによってチームを率いることが必要になっているからです。

 現代のリーダーは、周囲の人にエネルギーを与え、強い信頼関係を構築することが必要なのです。

 そのように「心を奮い立たせる」リーダーシップの必要性が高まる一方、その能力を身につけるための環境はほとんど整備されていません。

 ベインが世界各国の人事担当役員約300人を対象に調査を行ったところ、その約半数が自社のリーダーシップ研修はあまり効果的ではない、もしくは効果が持続するような形になっていないと回答しました。

 その理由は、「研修プログラムの対象者が限定されている」「プログラムの効果や費用対効果を測定するのが難しい」「本質的に異なる新しいリーダーシップスキルを自社のコア戦略と合致させるのが困難」などでした。

 これらの意見ももっともですが、我々はより本質的な限界があると考えます。

 今日のリーダーシップ開発や研修プログラムの一番の弱点は、「心を奮い立たせる」能力を独立した能力として正しく定義できていない点です。

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