マネジメント対談

中国古典と軍事理論に学ぶ経営組織学 守屋淳氏×田中靖浩氏 トークショー

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田中 私もビジネススクールで教えているので、今の話を体感しています。先生の役割がここ5年くらいで大きく変わりました。以前は、先生は生徒の知らないことを教えればよかった。こっちが高いところにいて、低いところにいる生徒に対して、知らないことを教えるというのが先生の役割でした。しかし、今はその意味がまったく崩壊しています。というのも、ネットで調べれば、私が教えようとしていることは書いてあり、ただで手に入りますから。書物もあります。

 5年前は、講義中にスマホをいじる生徒に対し怒っていました。「無礼者!」って。今は、芸風を変えました。講義の前に難しいことをインプットして、話すことはやめました。準備せずに行って、例えば、「世界最古の百貨店、フランスのボンマルシェができたのは何年だっけ?調べて」と生徒に言うと、すぐその場で調べてくれます。知識量での勝負は放棄するのです。ただ、その分教えるレベルは上がってしまい、それで何を教えるかといえば、物の見方だったり、考えだったり、です。自分自身が考えていることを彼らに提示して、彼らにも考えてもらうという、答えのない世界に突入ています。そうしないと先生ってもたないですよ。ネットは何でも知っていて、情報量で勝負しようと思ったらかないません。

2人が出会って生み出す関係性は絶対にまねできない

 ところで、今、楽天大学の学長と全国ツアーやってるんですが、そこでしばしば、DとBという話をします。人間の動機には2つあって、1つがD、deficit で、不足を埋めるという意味です。将来のイケてる自分の目標に対して、今イケてない自分を見て、うまくいっていない部分を埋める、欠けているものをビジネススキルとして補うということ。もう1つの動機 Bは、being で、あるがまま、自分がやりたいからやる、楽しいからやる、気持ちがいいからやる、ということ。Bはモチベーションが分かりにくいのに対し、Dは目標設定して自らそれを埋めるので、分かりやすいです。

 学長はサラリーマンなのに、ちょっと"浮いて"いて、講演ではこんなことを話しています。「浮くことが大事だ」「どうやったら浮けるか」「ギジギジにスケジュール入れてはいけない」「自分の実力以上に報酬はもらわないほうがいい」......。普通は、「自分の実力を示して、金はちゃんともらえ」と言いますが、彼は逆なんです。どうしてかというと、「余裕があるほうがいい」「スケジュールは埋まってない方が、面白そうなことがあったときに、すっと行ける」からだそうです。「リスケ」って言葉を使いだしたら、人生は危ない。応えられない状況にあるってことですからね。つまり、Bの状態をどうやって作るかが、大事ということです。守屋さんもB動機が強いですよね。

守屋 「守屋淳とは何者か」という質問については、考えるヒントをクレハの前の社長の岩崎隆夫さんからもらいましたので、紹介しますね。物作りには2種類あるそうで、1つは「組み立て」で、もう1つは「素材」です。組み立ては自動車とかテレビなどが具体的な例です。目指すものに向かって、ライバルを蹴落として頑張ります。しかし、素材の方は、皆さんと仲良くして、皆さんに使い方を考えてもらわないと売れないものです。成功している人間は、ほとんどこの2種類に分類されると思っていまして 私は「素材」の方かなって。この素材向けの人生で成功するために必要なのは、人に認めてもらえるような価値をもって、出会いを信じること、何かを目指すのではなく、出会いから進む道がどんどん決まっていくという感じです。

田中 守屋さんと講演でご一緒させていただいたとき、「アナログな人と人との出会い、2人が出会って生み出す関係性は絶対にまねできない」という名言に心動かされました。1人ひとりの個人はスペック的に似ている人がいるかもしれないですけど、2人が合わさって生み出すものはおいそれとまねができないという意味です。これは商売で言うと、良き関係を誰と作れるかということだと思うんですけど、月並みな言葉でいえば、コラボをどうやって成功させるかということです。今回は、守屋さんの「素材」のおかげでうまく対談を終われたように思います。どうもありがとうございました。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、人事、経営、人材、

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