テクノロジーの現場から

X線CT調査が変える歴史研究の最前線 文化財の新発見相次ぐ アジアも注目

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 大学機関との連携も進んでいる。京都大学は1910年代から保存している同大総合博物館のエジプトの「トキのミイラ」2体について「京博」にCT検査を依頼した。同大大学院理学科の松岡広繁助教らが京博から得た解析データをさらに調査し、今年2月に「トキのミイラは現在もサハラ砂漠のアフリカ南部で生息している『アフリカクロトキ』であることが確定できた」(松岡氏)という。さらに2体ともくちばしを左のわき腹に沿わせるように固定されているのも確認。「『左』という点に古代エジプトの宗教的な意味があるのかもしれない」としている。鳥類のトキは古代エジプトで「学問の神」として崇拝を受けていたという。

アジアの博物館なども関心

 松岡氏は「X線CT装置は文化財の保全といった利用方法を越えて広いジャンルでの研究・調査に欠かせなくなってきている」と話す。「巨大なサンプルを高解像度で内部観察できるシステムが開発されれば生物の進化など地球史的な研究も進むだろう」と期待を寄せる。

 京大の塩瀬隆之准教授はシステムの小型化や操作性が向上すれば「文化財を持ち運ばなくても収蔵場所や発掘現場で直接計測できる」という。さらに「X線だけではなくY線や中性子線などと複合化できれば解明できる史実はさらに増える」(塩瀬氏)。

 こうした日本の動きに敏感に反応しているのがアジアの博物館や大学機関だ。上海博物館も中型システムを導入、2度にわたって調査チームを東博に派遣した。「システムの能力、メーカーなど基本的なことから始まって幅広く質問を受けた」(東博)。現場での具体的な利用方法などについてさらに東博と技術交流を深めていくことになりそうだ。15年11月には韓国の国立中央博物館も設置検討の調査チームを東博へ派遣している。アジアの名門大学でも新たに導入する動きが出てきている。

 文化財用X線CT装置は1台づつ用途に合わせたカスタマイズが必要でそのまま量産化は難しい。供給する側のメーカーのメリットはさほど期待できなさそうにも思える。しかし、土屋均・東芝ITコントロールシステム取締役は「京博のシステムを手がけることで産業用では得られないノウハウを蓄積できた」と話す。

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