会社の老化は止められない。

コミュニケーションコストの増加で老化が加速 ビジネスコンサルタント 細谷功 氏

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 ある程度「ちゃんとした」会社は規制当局や株主に対しての説明責任も厳しくなるから当然こうした行為は重要なのだが、あっという間に「手段が目的化」し、形骸化していくさまは他の構図とまったく同じである。それでもまだ「外部説明向け」であれば救いはあるが、「社内の幹部向け」のためだけに「証拠づくり」の作業が増えていく。

 「中身より箱重視」の姿勢がこういうところにも出てくる。こうして付加価値を生まない「余計な仕事」はさらに増えていく。

「規模の経済」で隠れる「規模の不経済」

 そもそも、ここまでの膨大なコミュニケーションコストをかけてまで、組織は大きくならなければならないのだろうか。

 組織を大きくしようとする最大の要素は「規模の経済」である。

 とくに多額の設備投資が必要となるインフラ事業や大型のものづくりではこの傾向が顕著であり、これだけのコスト増を補ってもあまりある「規模の経済」が享受できる。そうなると従業員は、老化の進展やコミュニケーションコストの増殖による非効率性にも気づかなくなってしまうのである。

 産業構造の変化により、この構造は見直しを迫られるだろう。規模の経済が最も効くのは、いわゆる「重厚長大」型の産業であり、とくに膨大な設備投資が必要となる製造業や物理的なインフラ事業である。

 こうした事業においては「大きいこと」は圧倒的な優位として働くが、産業のサービス化、IT化、アプリ化といった動きは規模の経済が効きにくい構造へのシフトを意味する。そうなればコミュニケーションコストを代表とするような「規模の不経済」は、これまで以上に問題になってくるだろう。

細谷功 著 『会社の老化は止められない。』(日本経済新聞出版社、2016年)「第2章老化した会社の『やめられない症候群』」から
細谷 功(ほそや いさお)
ビジネスコンサルタント。1964年神奈川県に生まれる。東京大学工学部卒業後、東芝を経て、コンサルティングの世界へ。アーンスト&ヤング、キャップジェミニなどの米仏日系コンサルティング会社を経て、2009年よりクニエのマネージングディレクターとなる。2012年より同社コンサルティングフェロー。コンサルティングの専門領域は、製品開発、営業、マーケティング領域を中心とした戦略策定や業務・IT改革に関するコンサルティング。あわせて問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、国内外の大学などに対して実施している。著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『問題解決のジレンマ』(東洋経済新報社)、『いま、すぐはじめる地頭力』(だいわ文庫)、『「Why思考力」が仕事を変える』(PHPビジネス新書)、『具体と抽象』(dZERO)などがある。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、営業、管理職、

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