マネジメントインタビュー

経営判断の鍵は時代に合った価値観のバランス――渋沢栄一に学ぶ日本資本主義の原点 作家、中国古典研究家 守屋 淳氏

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――守屋さんご自身にとって、渋沢栄一のこの言葉が刺さったとか、この考え方に共鳴したということを教えてください。

 「成功や失敗は自分の身に残るカスである」――これは『論語と算盤』の最後にあります。これは私自身もそうなように、読まれた多くの方々もこれいいですねとおっしゃります。

――成功というとカスではなく"糧"というのが一般的に言われますが...

 論語のそもそもの考え方から来ていることです。人間はいつ死んじゃうかわからないじゃないですか。たとえば、山に登ろうという目標があったとして、人生でその山に登れるかどうかわからない。一生懸命登っている途中で死んじゃうかもしれないし、事情があって途中で断念せざるを得ないかもしれない。だけど、登る過程の格好良さは本人が調整できます。あの人あんなにすばらしい登り方している。周りの人助けながら立派に登っているとか。そういうことはできる。人生、結果ではなくて過程だという考え方があり、渋沢栄一はそれをこう表現しているのですよ。

中国古典初心者には『菜根譚(さいこんたん)』がおススメ

 ようするに、みんなのためにがんばって努力したという過程こそが大事で、結果として成功や失敗がくるかもしれないが、そんなものはカスに過ぎない。こういう言い方をしているんです。ある種、そうだよなとしか言いようがないじゃないですか。だって、いつまで生きているかわからないし、会社の社長さんだって何がどこまでできるかわからない。その中で、努力することはできる。結果は気にすることはない。自分がやるべきことをやったというのであれば、それは立派な人生だよ。そういうことを言ってくれているわけです。今の時代、あまりにも「結果、結果」と言われちゃうので、こういう風に言われると楽になるんじゃないですかね。

――守屋さんはいろいろな中国古典を研究されていますよね。今の時代、読んでおいたほうがいい中国古典は何ですか。

 今、孫子がブームになっていますが。自分の身を守るという意味では、孫子が必要なんだと思います。また今は、先ほど申し上げたとおり、グローバル化していく中で、そしてネット社会になっていく中で、個人の信用というのが非常に必要になってきた時代。なので、不特定多数の中で1対1の信頼関係が重要になってくると言われています。それじゃどうしたら信用される人間になるのか。それと自分が何に縛られているのかを知る意味でも論語は読んだほうがいい。どうしても論語になっちゃいますね。

 ただ、もうひとつ挙げるとすると、『菜根譚(さいこんたん)』ですかね。これは明代末期のもの。明代は比較的新しい時代なので、それまでの中国古典の比較的良いエッセンスを集めているところが特徴です。初心者の方には読みやすいと思いますよ。儒教と仏教と道教の良いところをエッセンスとして入れているといわれていますので、中国古典全体のいいところを反映した中身になっています。私自身の『菜根譚』の感想を言えば、「人間って弱いものなので、その弱さを自覚しつつ、どう生きればいいか」ということを上手く書いてくれています。そこが非常にいいと思います。


キーワード:経営、企画、経営層、ものづくり、技術、人事、人材、働き方改革、イノベーション、ICT、グローバル化

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