マネジメントインタビュー

経営判断の鍵は時代に合った価値観のバランス――渋沢栄一に学ぶ日本資本主義の原点 作家、中国古典研究家 守屋 淳氏

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――そもそも日本の資本主義の原点とは何か。渋沢栄一の考え方や実際に実行したことなどを基に、教えてください。

 伝統社会に近代化とか資本主義が入るときには、大体モラルがおかしくなります。それは拝金主義というものがはびこるからです。それは世界各国どこでも同じで、日本も例外ではありません。伝統を守って貧乏なおじさんと、ちょっとモラル踏み外してでも儲けちゃう人がいるとします。どっちが若者にアピールするのかというと、やっぱり後者みたいな人になっちゃう。でも結局、その後いろいろな問題が噴出することになりますが...。

金融という血液が分厚い日本の資本主義をつくった

 それともう1つ、日本の資本主義には特徴的なことがあります。普通、日本みたいな遅れて近代化する国というのは、開発独裁になるのが一般的。ようするに政府主導で、重点的に資本をがーっと投下して、ある産業を育てていくみたいになるのです。ところが日本だけはそうではなかった。すごい広がりを持てたんです。それは渋沢栄一のおかげですよ。

 彼は銀行制度というものを日本に作りました。ようするに皆様のお金を集めて、それを近代化に必要な産業に流していくという形を上手くとったのです。開発独裁の国は通常、政府関係企業か財閥系企業しか大きな会社がないっていう形になっている。けれど、日本は例外的にそういうのと関係のない、長く続く一流企業が非常に多い。分厚い資本主義を、そして実業界を作るに至ったのです。その元に渋沢栄一がいるのです。彼自身は、そういうことを考えてやっていた人。その先人の知恵を、今の経営者は学びたいと思っていると感じます。本質を見据えて、本当に今必要なものはなにかを考え、上手く手を打っていくためにです。

 日本は欧米以外の地域で、ほぼ唯一、自力で近代化を成し遂げた国だといわれています。じゃあ、なぜできたのか。優秀な政治家がいたことも確かですが、先ほど申し上げたように経済力をつけるために渋沢が着目した金融があったからです。

 金融は血液なんです。渋沢は、血液を流せば末端で臓器のような会社がにょきにょきできると考えました。ほかの国は、そうは考えなかった。まず会社とか、工場を建設すればいいと。中国とか韓国にも近代化の父みたいな人はいるのですが、渋沢のようには考えませんでした。ですから、ある地域だけは工場がにょきにょき建ったとしても広がらないんですね。ようするに血液がないから広がっていかない。ところが渋沢は、まず金融システムを建て、広がるベースを作った。だから、日本っていうのはこれだけ厚みのある資本主義ができ、経済力を持てて、だから近代化できたと私は考えています。日本の近代化の父ですよね、渋沢栄一は。

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