マネジメントインタビュー

経営判断の鍵は時代に合った価値観のバランス――渋沢栄一に学ぶ日本資本主義の原点 作家、中国古典研究家 守屋 淳氏

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 日本の資本主義の原点を見つめ直す――こんな経営者が増えている。株価が上昇基調にあるとはいえ、一方で個人消費は冷え込むなど、混迷の時代が続いている。その活路を見出すために、「日本の資本主義の父」といわれる渋沢栄一に注目が集まり始めた。その根本となる考え方がまとまっている著書が『論語と算盤』。渋沢栄一は何を考え、何を実行したのか。それを読み解けば、今後の経営の舵取りのヒントがみつけられるはずだ。そこで、『論語と算盤』を読みやすくした『現代語訳 論語と算盤』の訳者である守屋淳氏に、渋沢栄一の足跡の解説とともに、経営者に必要な基本的な考え方や心得を聞いた。

行き詰ったときの原点回帰が渋沢栄一

――まず、『論語と算盤』の現代語訳版をお出しになるきっかけを教えてください。

 渋沢栄一氏の5代目の子孫である渋澤健さんとの出会いがそもそものきっかけです。その関係で、経済同友会の方と『論語と算盤』の読書会をやることになりました。そのとき、参加した経営者の方々が口々に言われたのが「明治の文章は読みにくい」ということ。「英語はぺらぺらだけど、残念ながら漢文調の文章は何を言っているのかさっぱりわからない」と...。そうなったら、訳してしまうしかないと思って出したのが、『現代語訳 論語と算盤』なんです。

――経済同友会の経営者の方々とお付き合いするようになって、なにか気づいたことはありますか。

 渋沢栄一の考え方とか『論語と算盤』の考え方が今、こんなに経営者とかビジネスパーソンに求められているのかと。肌で感じたのはそこからでしたね。

 実は、多くの経営者の方々が、米国式の経営をいくら学んでも、日本で末永く続く会社を作れないのではないかという問題意識を強く持っていらっしゃる。日本って欧米に学べなくなると、原点回帰をするのかなと思っています。

 日本の今の会社の仕組みとか経済の仕組みを作ったのは渋沢栄一です。そういう意味で、渋沢栄一という原点に戻ってみて、われわれの繁栄の元って何だったんだと。それはそのまま生かすべきなのか、変えるべきところは変えるべきなのか。でも、それを考えるには、原点がそもそも何を意図していたのかを知らないとわからないじゃないですか。そこをちょっと勉強してみようという気持ちをすごく感じました。

 日本の明治時代の場合は、渋沢栄一が『論語』という伝統的な価値観、常識、道徳と資本主義を上手く結びつけることによって、モラルのばたつきを抑えられていたという面があります。現代もそういう意味では、情報化社会が進む中で、価値観の混乱が起こっていますよね。米国式の株主重視の資本主義とか、いろいろな考え方がごちゃ混ぜになっていて、ある種モラルの混乱を起こしている。そういう意味でも原点に帰ってみようというのが巻き起こっているのかなと、非常に感じるところがあります。

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