マネジメントインタビュー

日本企業の興亡をかけた「垂直統合化」の戦い GFリサーチ 代表 泉田 良輔氏

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 とても面白いデータがある(図表2)。任天堂のキャッシュ(現金および現金同等物)を年間の人件費+研究開発費で割ると、15くらいの数字になる。どういうことかというと、15年間、売上高がゼロでも、任天堂は社員を食わせていけるということ。株主からは「それだけのキャッシュがあるなら配当すべき」との圧力がかかっているが、任天堂はあまりしない。イノベーションがいつ起こるか分からないと思っているから、キャッシュを積み上げているのではないか。

<FONTBOLD />図表2 任天堂のネットキャッシュの推移とイノベーション・タイムリミット</FONTBOLD></p><p> イノベーション・タイムリミットとは、ネットキャッシュを(人件費+研究開発費)で割った値を指す。次のイノベーションが起こるまで、研究開発を続けながら会社を何年存続させられるか、という意味の数字である。出所:SPEEDAをもとにGFリサーチが作成

図表2 任天堂のネットキャッシュの推移とイノベーション・タイムリミット

 イノベーション・タイムリミットとは、ネットキャッシュを(人件費+研究開発費)で割った値を指す。次のイノベーションが起こるまで、研究開発を続けながら会社を何年存続させられるか、という意味の数字である。出所:SPEEDAをもとにGFリサーチが作成

 もちろん、イノベーションが起きるように職場環境やありとあらゆるものを整えていくのは会社の基盤として進めているが、それでもコントロールできないのがイノベーションであるという危機意識があるのだと思う。

 近年、グーグル、マイクロソフト、アマゾンなど、垂直統合の事業モデルの中でハードウェアのレイヤーを重視する企業が増えている。しかし、皆が「これはすごいね」と感動する新しいユーザーインターフェースはなかなか出てこない。アップルのSiriにしても現時点で成功しているとは言いがたく、マイクロソフトのゲーム機が採用しているKinectというジェスチャー入力も米国では受けているが、日本での人気はそれほどでもない。その点、日本のメーカーが30年間に3回もイノベーションを起こせたのだから、すごい。イノベーションを起こせば競争のルールを変えられる。

「コンテンツ」という新たな戦いの始まり

――ここまで絶好調だったアップルの「次」の一手をどう見るか。

 アップルの「次」につながる種は、あまりないと思っている。アップルもサムスンも現状の商品ポートフォリオでは今が業績のピークだと考えている。

 実は、ハードウェアとは違うところで「新しい戦いが始まっている」というのが私の見立てだ。今、安いハードウェアが世界中に広がる段階に来ている。電子部品メーカーも、出荷量は増えているがマージンを取りにくくなってきている。つまり、スマートフォンがコモディティーとして新興国に出回っている。

 歴史的な循環として毎度起こることなのだが、ハードウェアが普及した後で迎える戦いの舞台は「コンテンツ」である。コンテンツの商業的な価値はハードウェアの台数に影響されるし、ハードウェアのユーザーが1日にどれくらいコンテンツを視聴するかによっても価値が決まる。垂直統合の事業モデルの中では、主戦場が上位のレイヤーに移ることを意味する。

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