マネジメントインタビュー

「グローバル人材育成」に王道なし 経営戦略と同期化させ人事プロセスの見直しを 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授 中原 淳 氏

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特別ではないからこそ、地に足をつけた取り組みを

――「グローバル人材育成」をことさら切り分けて考えるべきではない?

 僕は「外国ポットンモデル」と呼んでいますが、3~4年前、社員を海外に1週間なり半年なり派遣し、現地を回ったり、現地の人とディスカッションしたりして、グローバル人材を育成したつもりになる、という現象がはやりました。「社内の会議は全て英語にする」と宣言した企業もあります。それらはグローバル化への対応が喫緊の課題だ、というメッセージを社員に伝える覚醒効果はありますが、実効性は極めて疑問です。

 海外に短期間、ポトンと放り込んだからといって、急に仕事ができるようになるわけではない。ましてや入社したての社員をいきなり海外に見習い派遣したところで、語学どころか仕事もできない状況では、職場に溶け込むことも難しい。コピー取りだけうまくなって帰ってくるのが関の山です。そういう不思議なことをやっている会社はいまだにたくさんあって、意外と「これから新人はみんな海外だ!」という経営者の鶴の一声で始まっていたりします。

 現地の人に信頼してもらえる業務経験やスキルがなければ、海外で仕事を回すことはできない。そのうえで、少なくとも自分の業務に関して英語で説明できるようにしておく必要はありますから、そのための語学研修を行ったり、見習い派遣期間を設けたりすればいい。ステップの踏み方は自ずと決まってくるはずだと思うのですが。

――言葉や文化の壁もあるのかもしれませんが、「グローバル人材」というと、どうも身構えてしまいがちです。

 グローバル人材って、なんとなく、大企業に勤めていて、ちょっとエリートで、英語ができて、海外での挑戦をいとわないタフな日本人、といったイメージがありませんか。でも、今のような市場の状態からすると、あらゆる人が程度の差こそあれ、グローバルという意識をもって働くことを求められているはずです。M&Aをすれば、人事や人材開発の担当者にとって、現地との電話会議や、現地のマネージャーを日本に招いての研修などは、日常の光景になる。海外に生産拠点を設ければ、それまで自分は国内畑と思っていた技術者や開発者も、普通に指導に行かなければならない。そもそもグローバル化と言っても、何も今に始まったことではなく、明治の頃から日本は、海外のいいものを取り入れ、追いつけ追い越せでここまでやってきた。そういう日本人の適応能力というものをもっと信じていいはずです。

 「新入社員研修があって、階層別研修があって、そのほかにグローバル人材育成のための研修プログラムとして、何々をやっています」といった、「限られた人に、限られた手法を用いて行われる特別な人材育成施策」であるかのような位置付けはおかしいと思います。むしろ自社のグローバル戦略に紐付けながら、地に足をつけて通常の人材育成そのものに取り組んでいけばいいのではないでしょうか。

キーワード:経営、企画、経営層、ものづくり、技術、人事、人材、働き方改革、イノベーション、ICT、グローバル化

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