マネジメントインタビュー

製造業「復活の答え」はもう出ている、実行は今 経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山和彦氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

儲からないのに、事業をやめられない

 どちらを選ぶにしても、「何かを捨てる」必要がある。事業そのものを捨てるのか、あるいは自社で抱えているバリューチェーンでいくつかのバリューレイヤーをぽんと捨てなければならない。

 日本の製造業は、この「捨てる」ということがあまりにも下手だった。ここに、利益率の低さに次ぐ、2番目の課題がある。

 日本は過当競争の状態だ。しばしば議論されるように、プレーヤーの数が多すぎる。海外では同じような製品を出すメーカーは1、2社に絞られているのだが、国内では5社も6社もあって、国内で消耗戦を繰り返している。本来なら事業のコンソリデーション(買収・合併などによる整理・統合)が進んでもおかしくない状況なのだが、そうなっていない。

 なぜコンソリデーションが進まないのか。「事業のコンソリデーションをしましょう」という議論は様々な産業でいつもしているが、暗黙の前提として「自社が事業を買う側の立場」で議論している。裏を返せば、「決して事業を売る側にはなりたくない」ということだ。「事業を売る」となれば、社内からものすごい反発が出る。事業のコンソリデーションは、誰かが自社の事業を売る気にならないと始まらないが、誰も事業を売る側にはなりたくない。こんな売り手のいない状況では、永久にコンソリデーションは進まない。

 状況が変わるのは、誰の目にも市場の負け組が明らかになったときである。そこに至ってはじめて負け組の企業は不採算事業に手を付けるのだが、そこでも中途半端な施策をとる。事業を「売却」するのではなく、「切り出し」という形で存続させようとする。たとえば負け組みを含む複数社が同種の事業を切り出して合併させ、共同で経営する形態である。「誰が勝って、誰が負けた」という構造が分からないようにするためだ。

 しかし、こういう合併の仕方では、複数の企業が対等の立場で経営する建前になっている。合併後の事業の整理・統合は一向に進まず、複数企業の並立状態がずっと続くので、事態はもっと悪くなる。なにしろ複数の企業間でコンセンサスを作ってからでないと決められないので、意思決定がますます遅くなってしまう。

 意思決定の遅さは多くの日本メーカーの欠点だが、切り出し型の合併はあいまいな意思決定を増やし、決定のタイミングをどんどん遅らせていく。意思決定でも「すり合わせ」をしようとするからだ。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。