マネジメントインタビュー

日本の経営陣は"半沢直樹"のようになれるか エゴンゼンダーインターナショナル 代表取締役 佃秀昭氏

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 CEO自らが個人として成長し続けるという姿勢はとても重要だ。「率先垂範」「隗より始めよ」は、本来、日本の得意技のはず。だから、日本の経営陣はウェルチ氏から学べる。役員人事とリーダーシップ開発を強化すれば、日本企業は必ず良くなる。

 日本でも、テルモの中尾浩治会長が率先して、自身や役員・部門長に対する「360度評価」を導入したという話を雑誌で読んだ。直接の部下からも含めて上下左右からフィードバックを得るという、大変良い事例だ。硬直した上下関係の中で、ともすれば「上司のために仕事をする」社員が出てきかねないが、360度評価という仕組みにより、自由闊達な風土を作り上げようとしている。こういう取り組みが増えるとすばらしいと思う。

フィードバックは企業文化を変える強い「仕組み」

 フィードバックを得ることで、人と組織がどれほど変わるか、実例を挙げよう。

 ある会社に私たちが経営人材コンサルタントとして入っていって、役員たちの人材鑑定をしたときの話だ。部下の人たちにヒアリングしてみると、異口同音に「A専務はとにかく人の話をきかないんですよ。でも、だれも専務には『ちゃんと話を聞いてください』とは言えない。あんなひどいことに気づかない専務は痛いですよ」とこぼす。

 ヒアリングが終わってA専務に面談し、「ちょっと耳が痛い話ですけど、いいですか」と切り出すと、「いいですよ、話してください」と言う。大抵の人は、最初は寛容だ。しかし、「部下の3人にレファレンスを取ったところ、A専務は人の話を全然聞こうとしない、という話が出てきましたが・・・」と本題に入ると、とても厳しい顔になった。厳しいフィードバックを受けた人は皆そうなる。ひどい人になると、「誰だ、それを言ったやつは!」と言い出す。

 だが、「ちょっと待ってください」となだめ、「あなたにとっては、ものすごいチャンスになる」と話している。「変わるのも自由、変わらないのも自由。どうしますか?」と尋ねれば、もやもやした気持ちを抱えたままではあっても、何かに気づくようだ。

 これと同じことを、別の企業のB常務にもしてみた。最初は「まったくもう・・・」としかめ面をしていたが、真面目な人なので自分の振る舞いを地道に直していった。ときには少し甘えたことを言う部下もいたが、やはり真面目に取り組んで、月に1回、フィードバックを受けるたびに直していった。

 そうして半年経ったころ、部下の部長たちに「B常務は、あと何を変えるべきでしょうか」といつも通りにヒアリングした。するとある部長は、「たぶん常務には、もう変えるべきところはないですね。変わらなくちゃいけないのは僕たちです」と答えた。

 これがフィードバックという「仕組み」の効果である。

 部下が上司にフィードバックするというのは、指揮命令系統の中ですごくやりにくいことなのだが、あえてそれをやり、あえて上司が部下の言うことを聞き、あえてその通りに直した。その背中を見た瞬間に、もう山本五十六の世界になっている。部下は「僕らが変わらなきゃ」と考えが変わる。常務の振る舞いを言い訳にしていた部長たちは、それができなくなって初めて「あぁ、自分の問題だ」と気づけるようになる。他責から自責に変わる瞬間だった。

 私は、日本企業において、これがチャンスになると思う。日本人はなんだかんだ言って率先垂範が好きだと思うし、私が昔、銀行に勤めていた頃も、よく上司から「俺からやるから、お前たちもよろしくな」と言っていた。そう話していた上司には、腹をくくったような潔さがあった。

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