マネジメントインタビュー

幕末の"再建の神様"の訓え、今こそ必要 日本政策投資銀行 代表取締役社長 橋本徹氏

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 山田方谷が着目したのは、全国的に高かった農具のニーズと、備中松山藩内でとれた砂鉄だった。備中松山藩は砂鉄の採取を藩の直轄事業にして大規模に始め、その砂鉄を使って3本歯の耕しやすい「備中鍬」を開発・生産。それを中間の商人を通さず江戸へ運んで、藩が直接販売した。江戸へ商品を直接運ぶために西欧から大型輸送船を購入し、玉島湾から江戸へ、商品を大量輸送した。

 これが江戸でものすごく売れた。中間マージンを商人に掠め取られなかったので、利益も大きかった。この利益をもとに借金を返済した点では財政改革だ。しかし、山田方谷の改革の本質は、それよりむしろ新事業の創出やバリューチェーンの革新ととらえるべきだろう。

――財政家でありながら、むしろ経営者・起業家としての才覚があったということか。

 そういうことになる。山田方谷の手法の中でうまいと感じるのは、社会のニーズを的確に読んで、それに合う商品をきっちり作り上げたことだ。当時、江戸では大火が頻発していたようで、家を建て直すための釘が大量に必要だった。山田方谷は、こうしたニーズも汲み取った。釘を大量生産して江戸で販売し、備中鍬と同様に利益を上げた。

 「社会のニーズは何か」を捉えようとする視点を持てるかどうかは重要なことだ。

 米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授は近年、CSR(企業の社会的責任)に代わる考え方として「CSV(Creating Shared Value、共有価値創造)」を提唱している。企業は社会的ニーズに合うものを創造して、社会の利益を増やすと同時に、企業自身の収益も高めるという考え方だ。それが新しい企業経営のやり方だとポーター教授は主張している。

 これは山田方谷のやり方そのものだ。直ちに利益を求めるのではなく、まずは義(社会にとって正しいこと)を求め、社会のニーズにがっちりと合わせることが重要と考える。そうすれば収益が上がっていく。

 この前、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の方に聞いた話だが、GE創業者のトーマス・エジソンも同じことを考えていたらしい。「私はまず世界の人々が何を必要としているかを発見する。そして必要としているものを発見できたら、それを発明する」という趣旨のことをエジソンは話していたそうだ。

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