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購入金額だけで「顧客を格付け」する愚行 本当に大切にすべきは「熱狂する顧客」 トライバルメディアハウス 池田紀行氏

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推奨意向の高さと利益成長率に強い相関

 熱狂顧客が企業にもたらす価値について、『顧客の信頼を勝ち取る18の法則-アドボカシー・マーケティング』(山岡隆志著)の中で興味深いデータが紹介されている。NPS(※)を提唱したフレッド・ライクヘルド氏による定量分析によると、コモディティー化が進行し、最も価格競争が激しいとされる航空業界において、NPSと利益成長率(1999年~2002年)の平均に強い相関関係が認められたという。この傾向は顧客の推奨が購買の最終意思決定に大きな影響を与えるほとんどの業界で見られた。北米最大のレンタカー会社であるエンタープライズ社のNPSと利益成長率が業界で飛び抜けていることも紹介されている。

(※)NPS:Net Promoter Scoreの略。推奨者正味比率の意。「このブランドを友人・知人にすすめる可能性はどの程度ですか?」といったアンケートを実施して、「0」から「10」の11段階で推奨意向を回答してもらう。推奨意向0~6の回答者を批判者、7~8を中立者、9~10を推奨者と分類したうえで、「(推奨者の数-批判者の数)÷合計回答数」をNPSとする。批判者が多いと値がマイナスとなる。米ゼネラル・エレクトリック(GE)がグローバルの経営指標として取り入れたことでも有名。

 顧客が熱狂し、推奨意向が高まれば、高い確率で顧客はほかの顧客を紹介してくれる。新規顧客獲得のために膨大な広告宣伝費をつぎ込まなくて済むため、販管費が下がり、利益が上がる。推奨者本人も他のブランドに浮気せず、中長期的に自社ブランドを使い続けてくれるため、LTVが高い。熱狂度は、間違いなく売上増とコスト減に貢献するのだ。

 熱狂顧客と推奨者が多い企業に、米ザッポスと、日本のスノーピークがある。ザッポスは、ネバダ州のラスベガスに本社を置き、米国とカナダで靴や衣料、アクセサリーなどを販売するEC事業者である。靴のオンライン販売では米国最大で、1999年の創業からわずか10年後の2009年に12億ドルで米アマゾンに買収された。

 ザッポスは自らを「靴を売ることになった顧客サービス企業」と称する感動創造企業だ。「信じられないくらい素晴らしいサービスだった」「ザッポス最高!」「超音速の配送で、顧客サービス博士号持ちですね」(出典:トニー・シェイ著『顧客が熱狂する靴店-ザッポス伝説』)など、感動のあまり涙ながらに書いた礼状を送る顧客がいるほど、ザッポスは顧客を感動させ、熱狂させている。

 日本にも、顧客を熱狂させてやまない会社がある。年間数十泊をキャンプ場で過ごすようなハードキャンパーたちの信頼を一手に得るというキャンプ用品総合メーカーのスノーピークである。2代目である山井太社長の代で急成長を遂げ、2014年12月に東証マザーズに上場を果たした。私も一昨年からキャンプを始めてスノーピークに出会い、以来、スノーピークの大ファンになってしまった1人だが、スノーピークには同ブランドをこよなく愛するスノーピーカーと呼ばれる熱狂顧客がいて、オフライン、オンラインを問わず活発な"布教活動"を続けている。

 かくゆう私も、キャンプ用品を一通りそろえようとしていたとき、社内のスノーピーカーにスノーピーク商品を熱く推奨され、結局、かなりの金額をはたいて本格派テントを含む数十アイテムのスノーピーク商品を買ってしまった経験がある。そして、購入後はスノーピークの思想や哲学、商品の素晴らしさに魅せられ、今度は私がスノーピークを熱っぽく語る布教者になってしまった。

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