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もう「顧客に聞いたニーズ」では儲からない 顧客を巻き込んだ「共創」だからこそ見えてくる未知の領域 トライバルメディアハウス 池田紀行氏

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 そのほかにも、その峠を走った86オーナーの写真やチェックイン情報などが掲載されている。

86オーナーの投稿で充実する「86 SOCIETY」の峠ガイド情報

86オーナーの投稿で充実する「86 SOCIETY」の峠ガイド情報

 このコミュニティーは、まさに商品購入後のライフスタイルを顧客と共につくっている。86オーナーは、「86という製品そのもの」に強い愛着を持っているが、それ以上に「86のあるライフスタイル」にワクワクしたいのだと思う。そうであるならば、86のマーケティングは、製品を購入してもらうまでではなく、むしろ86を購入してもらってからが主戦場となるべきだ。

 顧客は86を何のために買うのか、「86のあるライフスタイル」とは何なのかを突き詰めて考えたとき、そこには「クルマと一体となって峠を走りたい」「カスタムした愛車を自慢したい」「同じ峠で楽しむ仲間とつながりたい」という「文脈価値」がある。この価値を最大化するため、86 SOCIETYというコミュニティーが必要不可欠だったのではないだろうか。

 事実、86 SOCIETYで行ったアンケートでは、「何人に86の魅力を紹介したことがあるか」という問いに、平均約30人に紹介しているという結果が出たそうだ。また、全体の15%が販売店に3人以上連れて行ったことがあると回答している。86オーナーは、ただの顧客ではなく、マーケティングを支援してくれるブランドパートナーであり、86の文脈価値を共に高めてくれる価値共創者となっている。

 靴やウェアを製造・販売するナイキも、「Nike+」というコミュニティーを有している。ナイキはメーカーだが、Nike+が顧客に提供しているのは、靴やウェアというフィジカルベネフィットではなく、スポーツのあるライフスタイルである。孤独なランニングというスポーツを「スポーツのある暮らしを仲間と共創する場」に変えたのだ。

 そこにあるマーケティングの思想は、「良いものをつくって販売する」という従来のメーカー発想ではなく、「自社の製品が、どのような文脈で使用されるとき、顧客の感じる価値は最大になるのか」という価値共創の思想である。そして、顧客と共に文脈価値が最大となる価値共創戦略が実を結んだとき、競合他社が逆立ちしてもかなわない競争優位性を手に入れることができるのだ。

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