ソーシャルメディアのその先へ

優良顧客づくりは「熱狂社員づくり」から トライバルメディアハウス 池田紀行氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 あるとき、パートの1人が「井手さん、あのチームビルディング研修ってやつ、もうやめてください! 私たちにしわ寄せがきているんです。わかりますよね?」と詰問されたこともあるそうだ。さらに、「こんな、なんの成果も出ないようなことを大切にしている会社、つまらないよね」と、少なくない退職者も出た。

 それでも井手社長はチームビルディング研修をやめなかった。不満が出る社員やパートとは一対一で丁寧に対話し、納得してもらうまで話し合った。「社長就任後の2年間は、成長よりもチームづくりに集中する。だから、社長をクビにならない程度のギリギリの成長しかしない!」と親会社である星野リゾートの星野佳路代表にも明言していたそうである。

 幸い、3年目から徐々に成果が出始めた。社員の中にミッションへの共感と主体性が芽生え始め、活力あふれる現在の状態に至っているそうだ。

 今では、社内で「新しいプロジェクトを立ち上げます! 参加してくれる人~!?」と声をかけると「はい!はい!私やります!」と多くの手が挙がるという。大規模イベントは広告代理店やイベント会社に任せず、社員総出で開催している。熱狂顧客との交流が――面倒なことではなく――最高に楽しい仕事として社員一人ひとりに浸透しており、全員が「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションに共感し、2020年に市場シェア1%の実現に向け全力で走っている。その結果、商品だけでなく、「ヤッホーの企業文化」がファンに伝播し、さらにファンが増幅する。そんなサイクルに入っているように見える。

 実際、私が取材でヤッホーの本社にうかがったとき、すれ違う社員の全員が気持ち良いあいさつをしてくれただけでなく、「用件は承っているでしょうか?」と気にかけて声をかけてくれた。それは醸造所の技術者の方々にまで行き渡っていて、企業文化の浸透ぶりに圧倒された。

ヤッホーの経営は再現可能か?

 2回にわたってヤッホーの熱狂経営について考察してきたが、いかがだっただろうか。

 成長企業の美談を様々な角度からまとめ、後付けで成功事例としてもてはやすことはたやすい。しかし、戦略は再現可能性がすべてである。結果として成功したのか、狙って成功させたのかの間には天と地ほどの差がある。ヤッホーの事例はどちらだと感じただろうか。

 井手社長とヤッホーの熱狂社員たちが実行していることは、決して特別なことではない。顧客を楽しませようとすることも、イベントを開催することも、それを社員総出で運営することも、「わが社には絶対にできない!」というものではないだろう。確かに、高度にサイロ(縦割り)化された大企業の場合、部署間連携や他業務との兼ね合いなど、簡単ではないことも多いかもしれない。

 だからこそ、ヤッホーの取り組みには大切なヒントが隠されている気がするのだ。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。