「顧客の愛」に支えられていないブランドの売り上げは砂上の楼閣といえよう。移り気な消費者は、いつブランドを乗り換えるかわからないからだ。それに対して、自社の商品を「好きで好きでたまらないくらい愛しているから繰り返し買ってくれている」という熱狂顧客は、ブランドの売り上げを強く支えてくれるばかりか、新規の顧客も連れてきてくれる。最も大切に育むべき顧客である。
前回の『クラフトビールでヒット連発、その「愛される仕掛け」とは?』では、「よなよなエール」などのクラフトビールを製造販売するヤッホーブルーイング(以下:ヤッホー)の「顧客を熱狂させる必殺技」を紹介しながら、顧客を次々と熱狂させていく実態を追った。
ヤッホーブルーイングが製造販売するクラフトビール
出所:ヤッホーブルーイング
だが、注目すべきはその手法だけではない。顧客を熱狂させる必殺技を繰り出すのは、ほかならぬヤッホーの社員である。
実は、ヤッホーの社員自身がヤッホーのビールをこよなく愛し、お客様へのおもてなしマインドにあふれた「熱狂社員」だった。社員自身が熱狂しているからこそ、顧客も熱狂する。この単純だが難しい経営課題を、ヤッホーは長い年月をかけてクリアした。ヤッホーの井手直行社長へのインタビューをもとに、今回はヤッホーの「自社熱狂化戦略」に焦点を当てる。
「僕らが本気で面白がらないと、お客さんは面白がってくれない」
前回述べたように、ヤッホーの井手直行社長は、営業職だったころに担当した「よなよなエール楽天市場店」でのネット通販と楽天大学(※)で学んだことを通して、顧客が求めるもの、面白がることに気づいた。
(※)楽天市場に出店する事業者向けの教育サービス。マーケティングや店舗運営のノウハウを学べる。
井手社長は、日経ビジネスオンラインの記事の中でこう話している。
僕らが本気で面白がらないと、お客さんは面白がってくれないと知ったのもその頃です。ビールはしょせんビール、たかがビールです。でも、そのたかがビールに超楽しいエピソードがあったら、お客さんも幸せになったり、愉快になったりすると思うんです。
そう思うようになった時から、僕らはビール製造業からビール製造サービス業になったんだと思っています。
出所:「僕らが年率40%の成長を実現しているワケ」 第2回ヤッホーブルーイングの井手直行社長に聞く(上)