不動産格差

2022年問題への対応遅れが空き家増やす 不動産コンサルタント、株式会社さくら事務所 会長 長嶋 修氏

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住宅用地が一気に放出も

 前出の都市計画現況調査によると、過去5年間で生産緑地の減少は約595ヘクタール(約180万坪)、マイナス4.11%程度です。高齢の所有者が多いため、今後5年間で減少はさらに加速しそうです。仮に8%程度の減少にとどまったとすると、2022年時点で、1万2750ヘクタール(3856万坪)、10%減としても1万2473ヘクタール(3770万坪)は残っており、これらの大半が一気に市場放出される可能性があります。

 2022年以降、これらの土地に新築一戸建てが建設されるとします。土地開発の際には道路用地などにとられ、宅地としての有効面積は75%程度になります。ここに敷地面積30坪の新築一戸建てを建設する場合、全国の生産緑地には約96万戸、東京都に約26万戸、23区内には3万戸分の戸建てを建設することができます。マンションやアパートであれば、建設戸数は飛躍的に増大します(2022年までの生産緑地減少率8%の場合)。

 2003年、埼玉県羽生市が人口増大を目論んで、原則として住宅を建てられない「市街化調整区域」の農地に、住宅を建設できるよう条例を定めた結果、市街地からほど遠い立地に新築アパートが乱立しました。その結果、おびただしい数の空き家がうまれ、将来のインフラ維持費という形の負債を残すことになりました。

 大量の生産緑地が放出される可能性が高い2022年までに対応が遅れた自治体は、羽生市のように新築住宅建設ラッシュに見舞われることが懸念されます。

 東京・練馬区は生産緑地の解除を望む地主に対し、特別養護老人ホーム用に、社会福祉法人などへ土地を貸し出すことを提案しています。

 政府は2016年5月、都市農地の保全を強力に推進する方針を示していますが、どうなるかは全く不透明です。

 資産価値の面からも、物件検討の際は周辺の土地の活用状況や自治体の都市計画をよく把握しておく必要があります。

長嶋 修 著 『不動産格差』(日本経済新聞出版社、2017年)、第1章「2022年、住宅地バブルの崩壊」から
長嶋 修(ながしま おさむ)
不動産コンサルタント、株式会社さくら事務所 会長

1967年生まれ。広告代理店、不動産デベロッパーの支店長・不動産売買業務を経験後、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行う、さくら事務所を設立。著書に、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)、『不動産投資 成功の実践法則50』(ソーテック社)、『失敗しないマンション選び』(日本実業出版社)、『住宅購入学入門――いま、何を買わないか』(講談社+α新書)、『住宅選びこれだけ心得帖』(日本経済新聞社)ほか。

キーワード:経営、企画、営業、経営層、管理職、プレーヤー、マーケティング、不動産、環境問題

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