不動産格差

2030年、新築つくり過ぎで3割が空き家に 不動産コンサルタント、株式会社さくら事務所 会長 長嶋 修氏

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 この理由には非正規雇用率の増加、所得の低下、晩婚化などがありますが、以前と違ってきているのは、持ち家に対する「マインド」です。

 今の若い人は、住宅を所有することについて、かつてのようなステータスを感じていません。ただでさえ少なくなる一方の住宅購入層が持ち家志向を持たなければ、不動産需要は大幅減となり、大きな価格下落圧力につながります。

「日本人の持ち家信仰」は高度成長期以降

 「日本人には持ち家信仰がある」とよくいわれますが、それは嘘です。日本人の、とりわけ都市部の持ち家志向は、戦後の高度成長期に形作られたものに過ぎません。

 戦前の東京の持ち家率は10%台、大阪は9%程度、都市部とされたところ全体で見ても20%強と言われています。もっとさかのぼれば江戸の頃はほとんどが借家でした。一方で地方の持ち家率は比較的高かったようです。

 いずれにしても都市部における、過去から見れば特殊な価値観ともいえる持ち家信仰は、戦後の短期間に形成されたと考えたほうが自然です。

 日本は、戦争で焼け野原になったあと、奇跡的ともいえる経済復興を遂げ、一気に先進国の仲間入りを果たしました。まずは「傾斜生産方式」。鉄鋼・石炭などに人・モノ・カネを投入するという政策で産業復興の糸口を見出しつつ、朝鮮戦争による経済特需を経て、1954年の鳩山内閣あたりから紆余曲折を経て20年ほど続く高度経済成長期に入りました。この頃は年平均10%で経済成長していました。まさに「モーレツ!」の時代。今となってはちょっと考えられません。

 このプロセスの中で、地方から都市に出てくる労働力は「金の卵」と呼ばれ、引っ張りだこになりました。やがて、もともと都市部にいた人や地方出身者たちが住宅を購入するようになる頃に形成されたのが「持ち家信仰」です。

 当時は住宅が全く足りず、「つくれば売れる」といった状態でした。とりわけ東京など都市部の住宅難は深刻で、国会では「もっと住宅を増やせ! 新築をつくれ!」と野党が叫んでいた時代です。

「住宅すごろく」の終わり

 1970年代には朝日新聞が「住宅すごろく」という言葉を編み出します。「最初は小さな中古マンション、次に中古一戸建てに移り、やがては郊外の新築一戸建てで上がり」といったストーリーです。地価がドンドン上昇し続けていたため、とにかくまずは小さな住宅を買い、その含み益を使って出世魚のように成り上がっていこうという話です。

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