不動産格差

2030年、新築つくり過ぎで3割が空き家に 不動産コンサルタント、株式会社さくら事務所 会長 長嶋 修氏

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 しかし、こうした一見ドラスティックにみえる方策も、効果のほどは限定的というのが大方の見解です。というのは、この法律は、さまざまな意味で危険とみなされた「特定空き家」にしか適用されないからです。

 さらに、行政代執行によって空き家を壊したとしても、解体費を所有者から回収できるのかという問題があります。秋田県大仙市では、国の法施行に先駆けて独自に条例を定め、これまでに空き家を約600万円分取り壊しましたが、回収できたのは3万円に過ぎませんでした。

 こうなると、「特定空き家」は事実上「税金を使って壊す」ということになり、自治体の財政を圧迫しかねません。

 さらに今後、都市部で顕在化しそうなのが、「空き家マンション」の問題です。立地の良い一部マンションを除き、売買・賃貸などのニーズがないマンションは建物とともに所有者も高齢化、徐々に人がいなくなり、修繕積立金も貯まらず、スラム化する可能性があります。

空き家増加の原因は「新築のつくり過ぎ」

 空き家が増加する根本的な原因は、世帯数でも人口減でもなく、「新築のつくり過ぎ」にあります。西欧の多くの国では、10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計し、それを基に住宅政策を決定しています。2003年から10年間の各国の世帯数当たり新築建設をみると、低いのがスウェーデンの5.6%、イギリス7.2%、イタリア8.3%。大半が10%以下を見込んでいます。

 これに対し、日本にはこうした目安がありません。毎年90万戸程度の新築住宅を量産している日本に空き家が増大するのは自明です。適正な新築数はおそらく45万戸程度だと思います。イギリスと同じ7.2%なら年間着工は35.9万戸程度、イタリアと同じなら41.47万戸。10%にするなら49.9万戸程度が適正になります。モノの価格は「需給」で決まりますが、住宅も例外ではありません。

 若年層の持ち家率の低下傾向も顕著です。2013年住宅・土地統計調査(総務省)によれば、日本の持ち家率は60%程度です。高いのは、スペインが約79%〈2014年〉、イタリアが約73%〈2014年〉、アメリカが64.5%〈2014年〉。低い所でドイツが52.5%〈2014年〉と、先進国の中で日本は真ん中あたりですが、昨今は若年層になるほど持ち率が低下しています(Wikipedia「List of countries by home ownership rate」より)。

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