不動産格差

不動産の9割が下がっていく 不動産コンサルタント、株式会社さくら事務所 会長 長嶋 修氏

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 当然、交通網の整備も加速させなければなりません。例えば鉄道です。現在の大江戸線、ゆりかもめ、りんかい線、バス路線だけでは輸送力に限界があるのは明らかで、バス高速輸送システム(BRT)や路面電車(LRT)などが検討されています。

 オリンピックが決定する以前は、有楽町―晴海間の新鉄道が検討されていました。東京駅から豊洲・有明・台場方面まで延伸する話も出ています。

 1964年東京オリンピックの選手村は、米軍居住地域だった「ワシントンハウス」跡地の渋谷区代々木に建設されました。オリンピック以前はぱっとしない工場街でしたが、オリンピック後は高級住宅地に様変わり、周囲には表参道や原宿などの商業集積地が誕生しました。2020年オリンピックの選手村に予定されている晴海は、国が新成長戦略として進める総合特区制度のエリアにも位置づけられており、柔軟な街づくりが可能になります。

経済成長を伴わない不動産上昇には限界がある

 交通網の整備は都心部全体に広がっていくでしょう。成田空港―羽田空港間の移動は92分から50分台に短縮されます。押上―泉岳寺間の新路線、東急・京急蒲田駅間を結ぶ「蒲蒲線」、環状8号線の下を走る「エイトライナー」などの構想もあります。

 鉄道といえば、2020年に山手線の田町・品川間に設置予定の新駅は、高層の商業施設やオフィスビルからなる、東京ドーム15個分の開発を促します。

 道路については「首都高速中央環状線」が2015年に全線開通、6割程度の完成割合である「東京外かく環状道路」、「首都圏中央連絡自動車道」といった3つの環状道路などは、2020年までに9割の完成を目指すことになっています。

 こうしたインフラ整備が進んでいけば、東京の利便性は確実に増し、それを見込んだ住宅供給が加速します。住宅ができれば生活に必要な飲食や日用品などの商業施設も増え、さらに利便性に磨きをかけることになります。

 こうしたインフラ投資が行われる一部地域を除き、不動産市場にもたらす恩恵は、限りなく限定的だと思います。昨今は業界関係者の多くが醒めた見方をしています。

 はっきり言えることは、今後の不動産価格の上昇は、日本経済の成長や給与所得の上昇を伴うのならば健全ですが、そうでない場合、その分はバブルになります。その後間違いなく下落し、国の借金と供給過剰の住宅が残り、状況はさらに悪化する懸念があります。

長嶋 修 著 『不動産格差』(日本経済新聞出版社、2017年)、序章「不動産の9割が下がっていく」から
長嶋 修(ながしま おさむ)
不動産コンサルタント、株式会社さくら事務所 会長

1967年生まれ。広告代理店、不動産デベロッパーの支店長・不動産売買業務を経験後、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行う、さくら事務所を設立。著書に、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)、『不動産投資 成功の実践法則50』(ソーテック社)、『失敗しないマンション選び』(日本実業出版社)、『住宅購入学入門――いま、何を買わないか』(講談社+α新書)、『住宅選びこれだけ心得帖』(日本経済新聞社)ほか。

キーワード:経営、企画、営業、経営層、管理職、プレーヤー、マーケティング、不動産、環境問題

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