宅配がなくなる日

宅配が崩壊した本当の理由 フロンティア・マネジメント 代表取締役 松岡 真宏、シニア・アナリスト 山手 剛人

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 無人ロボットやドローン(無人機)が年間40億個もの荷物を確実に私たちに手渡してくれる未来は当面先のことであり、それを待つ余裕はない。価格改定にしても、短期的には需給逼迫(ひっぱく)を調整する機能を果たすかもしれないが、宅配サービスにおける「ラストワンマイル(荷物の受け渡し)」の機能が追いつかなければ問題の根本的な解決策にはならない。

日本の宅配はなぜ今制度疲労を起こしたのか

 大切なことは、「過去40年にわたって世界最高水準の品質と安定性を維持してきた日本の宅配サービスが、なぜ今になって制度疲労を起こしたのか」という疑問に向き合い、それに対する持続可能で自律的な解決策を探っていくことなのである。

 2016年の宅配便市場の総取扱個数は、前年比6%増の38億7000万個と過去最高を記録した。その中にあって、最大手のヤマト運輸は2016年度(2017年3月期)の「宅急便」の取扱数がおよそ18億7000万個となり、業界シェアは50%に迫る勢いだ。ヤマト運輸にとって「宅急便」最大の荷主はアマゾンジャパンであり、15~20%(数量シェア)がアマゾンからの荷物であるとも言われる。

 業界2位の佐川急便は、企業向け配送サービス(BtoBビジネス)が主力事業で、ヤマト運輸ほどキメ細かな配送拠点網(ネットワーク)を持っていなかった。そのため、2013年にアマゾンとの取引契約を打ち切った。この佐川急便の撤退により、業界首位のヤマト運輸はアマゾンからの宅配荷物の急増を一身に背負うことになっていったのである。

 ヤマト運輸が40年の歳月をかけて築き上げてきた宅配網は、6000カ所を超える営業所(集配や宅配の最終拠点)と、そこから集荷された荷物をエリア別に仕分ける「ベース」と呼ばれる幹線輸送拠点(約70カ所)を結ぶことで、日本全土を効率的に網羅する。これにより一部の遠隔地を例外として、集荷された翌日には荷物が届くことを基本サービスとする世界にも例を見ない精緻なネットワークを構築しているのだ。

 私たち日本人はこのサービスにすっかり慣れ親しんでいるが、欧米など他の国や地域でこれほど迅速な配送サービスがあるという話は寡聞にして知らない。そして、この日本が誇る宅配サービスの不具合が端的に表れたのが「再配達問題」なのである。

 国土交通省が2014年に行った調査によると、宅配便業界の荷物のおよそ2割が最初の訪問時に渡すことができず、再配達が無料サービスとして行われているという。

 しかし、実際の宅配サービスの現場では、2度目以降の訪問までが空振りに終わったとしても、時間の制約があるために、ドライバーが督促状のごとく2枚目、3枚目の不在伝票を残していくことは少ない。

 また、原則として受取人が不在だった荷物は営業所に持ち帰って保管しなくてはならないが、実際にはそのままトラックや荷台付きの電動アシスト自転車に積んだままで担当エリアを周回することが常態化しているため、宅配ドライバーにとっての再配達の実質的な負荷は、国交省の調査にある2割という数字を上回っている可能性も否めない。

 ここで、日本の宅配サービスをひとつの「ネットワーク」として、ネットワーク理論も借りながら捉えてみたいと思う。構造に立ち返ることで、新たな視点も浮かびあがるはずだ。

 実際のところ、私たちを取り巻く社会インフラには、「蜘蛛の巣」のように張り巡らされた宅配網とよく似た構造を持つものが数多くある。例えば、高速道路網や航空経路網がそうだ。当然ながら、インターネットなどの情報通信網もそれに該当する。

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