投資レジェンドが教える ヤバい会社

"サラリーマン社長"に成長は期待できない レオス・キャピタルワークス代表取締役社長 藤野 英人氏

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 「マーフィーの法則」に「食べられないものも細かく砕けば食べられる」というものがありますが、これを企業経営に当てはめれば、「間違った意思決定も責任を分散すれば通せる」ということになってしまうのです。決定プロセスや決定項目を細分化すると、結局、責任を負う人はいなくなり、サラリーマン経営者は安泰というわけです。

 このようなやり方は、『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』(中公文庫)にも載っています。日本が戦争に負けた後、A級戦犯にインタビューしたところ、誰もが日本は負けると思っていたという話があります。みんなが負けると確信しながら突き進んでしまった理由は、まさに「意思決定の分散の結果」だといえるのではないでしょうか。

 "民主的プロセス"で選ばれた経営者は、「敵をつくらない」「人から叩かれない」、いわゆる「いい人」であることが多いという特徴があります。「いい人」が「軋轢(あつれき)を生まないように」と全方位に配慮してコメントすれば、内容が無難で総花的なものになることは避けられません。大企業の場合、赤字の部署でも黒字の部署でも同じように配慮されて、経営上、革新的なものが生み出されにくい土壌ができてしまうのです。

東芝問題は"サラリーマン経営"の大企業にとって他人事ではない

 「サラリーマン経営者」のダメな例の見本といえるのが、経営危機に陥った東芝です。

 皆さんは、人事の世界で有名な「ピーターの法則」をご存じでしょうか。

 サラリーマンが能力に応じて出世していくとすると、いずれ能力の限界を迎えて「課長止まり」となる人もいれば「部長止まり」になる人もいます。つまり課長止まりの人は「それ以上になれない能力の人」ということになるわけです。すると結局、組織のポジションは「そこまでしか昇進できない人」で埋め尽くされていくことになります。これがピーターの法則です。

 外資系企業の場合、多くは「アップ・オア・アウト(昇進するか、さもなくば辞めるか)」の世界なので、ピーターの法則は回避されます。

 一方、日本の大手企業の場合、「昇進できなくなれば辞める」という考え方は一般的ではありませんから、ピーターの法則で考えれば組織内のポジションは「それ以上は出世できない無能な人」で溢れることになってしまうでしょう。「無能な人」がどんどん溢れる組織は不活性化し、事なかれ主義に陥りがちになります。いわゆる「大企業病」の症状のひとつです。

 このような企業風土の中、任期が限られているサラリーマン経営者には、「この情報を開示して株価が下がったら自分の評価も下がる。それならとりあえず問題を先送りしよう」というバイアスがかかりやすくなります。

 実際、東芝では歴代社長が3代にわたって不正会計を申し送り事項としてきました。病巣が小さいうちに手を打つこともできたはずですが、事態が悪化していることに蓋をし続け、米国の原発事業で巻き返しを図ろうと大博打を打ち、にっちもさっちもいかなくなってしまったわけです。

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