勝ち抜く中小経営への強化書

ソーシャルビジネスこそ理想の新事業 日本政策金融公庫総合研究所 研究員 楠本 敏博氏

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 ソーシャルビジネスを進めていく上での主な課題は以上に挙げたとおりです。課題の克服は簡単ではなく、参入は難しいように思えるかもしれません。売り上げや利益の確保に苦しんでいるソーシャルビジネスが多いことは事実で、どのような社会的問題でもその解決がビジネスとして成立するとは限りません。また、地域貢献、社会的問題といってもその幅は広く、地域のお祭りへの参加から地球温暖化のような環境問題まで様々です。

中小企業の強みを生かす

 大切なのは数ある社会的問題の中から、本当に必要とされているものは何か、ビジネスとして成立するものは何かを見極めることです。そのためにも地域に根差した中小企業だからこそ得られる「情報」が、ソーシャルビジネスの対象を見つけるために必要と言えるでしょう。小回りが利く中小企業だからこそ応えられる問題もあるかもしれません。

 最近注目されている空き家問題はその一例と言えます。どこに空き家があるかを把握する必要があるため地域の情報がないと解決は難しいですが、放置していては住民が減るだけでなく、治安の悪化や火災の危険性の増大にもつながります。こうした中、ビジネスとして空き家をリフォームして子育て世代に貸し出す取り組みが始まっています。空き家が活用され地域が活性化すれば、中小企業にとっては顧客の増加や安定した従業員の確保にもつながります。

 また、中小企業がこれまで収益事業を行ってきた経験も、ソーシャルビジネスを成功させるうえで重要になります。ソーシャルビジネスが直面する課題はすでに述べましたが、採算性の維持や人材の確保・育成などそれらの多くは企業経営における課題としてもよくみられるもので、経営者の中には苦労された人も多いことでしょう。本業で課題を克服した経験は、ソーシャルビジネスに取り組む上でも生きるはずです。

 もし、社会的問題へのアプローチの仕方がわからないというのであれば、すでに社会的問題の解決に取り組んでいる企業と協力することも有効です。ソーシャルビジネスの中心を担っているNPO法人は、社会的問題の解決に関するノウハウを持っている一方で、採算性の維持に苦労している例が多いようです。中小企業が持つ経営に関する知識や経験は、今あるソーシャルビジネスの採算性向上にも役立つでしょう。

 本業の維持、拡大は大切ですが、周囲の環境に目を向けることも重要です。市場環境や取引先の動向だけでなく、企業が存在する地域社会の変化も中小企業の存続に大きな影響を及ぼしかねません。社会的問題の解決に取り組むことは一見すると遠回りに思えるかもしれませんが、本業を助け事業基盤を維持するために重要な役割を果たします。

 地域社会の問題を解決し本業に好影響をもたらすうえ、事業自体が収益を上げるのであれば、ソーシャルビジネスは理想的な新事業と言えるでしょう。地域が抱える社会的問題に少し目を向けてみることで、きっと新しい事業のヒントが得られるはずです。

楠本 敏博(くすもと としひろ)
日本政策金融公庫総合研究所 研究員。

2007年東京大学法学部卒業後、中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)入庫。神戸支店、新宿支店などを経て2014年より総合研究所にて中小企業に関する調査・研究に従事。最近の論文に『EUの社会的企業支援について』がある。

キーワード:ソーシャルビジネス、経営層、管理職、経営、企画、経理、人事、人材、ものづくり、営業、マーケティング

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