勝ち抜く中小経営への強化書

ソーシャルビジネスこそ理想の新事業 日本政策金融公庫総合研究所 研究員 楠本 敏博氏

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人手確保が最大の課題に

 日本のソーシャルビジネスが地域社会の身近な問題に対応しているという姿が浮かんできますが、ソーシャルビジネスを進めていく上での課題にはどのようなものがあるのでしょうか。

 ソーシャルビジネスの採算を尋ねた質問では、「黒字」と答えた企業は25.0%にとどまり、「補助金を含めれば黒字」が37.6%、「赤字」が37.4%となっています。会社形態での企業に限っても約4割は赤字という状況です。ソーシャルビジネスではサービスの利用者、対象者から十分な報酬が得られないこともあるなど、採算性の維持が課題となっています(図表2)。

図表2 ソーシャルビジネスの採算性

資料:日本政策金融公庫総合研究所「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」(2014年)

資料:日本政策金融公庫総合研究所「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」(2014年)

 経営上の課題を尋ねた質問では「人手の確保」を挙げる企業が最も多く、49.0%と約半数にのぼりました(図表3)。採算性の維持が難しく、十分な人手を確保できない状況のようです。また、社会的問題の解決には専門的な知識や技術が必要な場合もあり、「従業員の能力向上」が課題の2番目となっています。ソーシャルビジネスに取り組む上で人材の確保・育成が大きな問題となっていることがわかります。

図表3 ソーシャルビジネスの経営課題

資料:日本政策金融公庫総合研究所「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」(2014年)

資料:日本政策金融公庫総合研究所「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」(2014年)

 また、「行政との連携」を挙げる回答も約3割ありました。行政による助成や支援などソーシャルビジネスの拡大には行政の役割も大きいと言えるでしょう。さらに、事業継続に不可欠な「運転資金の確保」を課題として挙げる回答も27.1%と多く、ソーシャルビジネス単独での事業継続が難しい場合もあるようです。ソーシャルビジネスに関して民間金融機関からの借入を行ったことがある企業は約25%にとどまり、資金調達についての相談先を持たない企業も多いようです。資金が必要となった時は経営者が補てんしているのかもしれません。

 「社会的問題への啓蒙」を課題として挙げる回答も16.9%ありました。昨年、一般の個人を対象にインターネットを通じて行った別のアンケートでは、「社会的排除に関する問題」「地域社会に関する問題」について、「とても関心がある」「多少関心がある」を合わせると約6割の人が何らかの関心を示していましたが、「とても関心がある」に限ってみると、それぞれ15.6%、14.9%にとどまっています。強い関心を持っている人はそれほど多くないようです。また、ソーシャルビジネスおよびコミュニティビジネスについての認知度は3割弱にとどまっています。

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