勝ち抜く中小経営への強化書

事業承継で生まれ変わる-後継者による経営革新- 日本政策金融公庫総合研究所 研究員 鈴木 啓吾氏

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 経営革新を成し遂げた企業には業績の改善だけではなく、「従業員や社内体制の変化」「地域や産業への波及」「さらなる経営革新の誘発」といった効果も生まれています。その中でも経営革新によって「従業員や社内体制の変化」という効果が生まれたD社の事例を見てみましょう。

経営革新は従業員の意識も変える

 事務用品の卸売業者としてスタートしたD社は、後継者の主導により、顧客のオフィスに関する悩みを解決するソリューションビジネスへの転換、ホテル業へ進出という2つの経営革新に挑みました。ホテルを運営する人材は、あえて経験者を採用せず、従業員から希望者を募りました。経験者がいると頼ってしまうので、初心者だけの方が自ら工夫して運営にあたるだろうと考えたからです。オープン直後こそ赤字でしたが、稼働率の向上、経費の削減などについて、皆でアイデアを出し合い実践した結果、早期に黒字転換させることができました。

 これを機に、職場の雰囲気が変わります。以前は各従業員が淡々と仕事をこなすだけでしたが、問題があれば皆で話し合って解決しようという空気が流れるようになりました。また、ソリューションビジネスにおいても、顧客との会話のなかから積極的に課題を見つけて解決方法を提案する意識が従業員に芽生えました。

 従業員の自主性をさらに引き出すために、人事の立候補制も取り入れました。管理職への昇進、担当事務について希望を尋ね、できる限り受け入れるようにしたのです。その効果はてきめんでした。例えば、同社のホテルが好評を博している理由の1つに「女性専用フロア」があります。このアイデアは入社半年でホテルの支配人に立候補し、実際に任せた女性従業員から出たものでした。

 ここまで、中小企業の後継者が経営革新を成功させるためのポイントを見てきました。先代がとらわれていたものを乗り越え、後継者が各々の特性を活かした経営革新を行うことで、企業は再び活力を取り戻すことができるのです。

 繰り返しになりますが、事業承継は経営革新の好機です。これから事業承継を迎える企業はその機会を最大限に活かし、大きく飛躍してほしいと思います。

鈴木 啓吾(すずき けいご)
日本政策金融公庫総合研究所 研究員。2009年に慶應義塾大学環境情報学部卒業後、日本政策金融公庫に入庫。東大阪支店、証券化支援室、新事業室を経て、2013年より総合研究所で中小企業に関する調査・研究に従事。

最近の論文に『事業承継を機に経営革新する中小企業』『事業承継で生まれ変わる小企業-後継者による経営革新-』がある。

キーワード:経営層、管理職、経営、企画、経理、人事、人材、ものづくり、営業、マーケティング

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